アルマで見た銀河「ケンタウルス座A」

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【2012年6月5日 アルマ望遠鏡

アルマ望遠鏡が、1200万光年かなたの活動銀河「ケンタウルス座A」の中心部を観測した。これまでにない解像度で、大量の塵の帯に隠された銀河の奥深くを写し出すことに成功している。


ケンタウルス座A

アルマ望遠鏡がとらえたケンタウルス座Aの中心部(青と紫の部分)を、可視光画像に重ねたもの。紫〜濃い青は手前方向に動くガスを、明るい青色は遠ざかる方向に動くガスを示し、銀河の回転を表す。クリックで拡大(提供:ESO/NAOJ/NRAO/T.A. Rector)

巨大な楕円銀河「ケンタウルス座A」は、強い電波を放射する電波銀河としてはもっとも太陽系に近い天体だ。これまでにも多くの望遠鏡で観測されており、その中心部には太陽のおよそ1億倍の超大質量ブラックホールが潜んでいると考えられている。

画像は、チリのラシーヤ天文台で撮影された可視光画像にアルマ望遠鏡の観測データを重ねたものだ。可視光では、数千億の星を背景として、楕円銀河のような形をしたケンタウルス座Aが浮かび、中央の黒い帯が銀河中心部を隠している。この黒い帯には大量のガスや塵、そして若い星が隠れている。ケンタウルス座Aは巨大な楕円銀河と小さな渦巻銀河とが衝突してできたものと考えられているが、飲み込まれてしまった小さな銀河の残骸がこの塵の帯を作っている。

だが、電波を観測するアルマ望遠鏡ではその内部を調べることができる。アルマ望遠鏡がとらえた、一酸化炭素(CO)分子が出す波長1.3mmの電波が、画像中青色で示されている部分だ。CO分子を含むガスの雲が銀河の中を動くことで生じる電波の波長のわずかなずれが色で表現されている。

銀河の中心より左側の紫から暗い青色のガスは手前に近づくガスの分布、右側の明るい青は遠ざかる動きをするガスの分布を示しており、銀河の中のガスの回転の様子がわかる。ケンタウルス座Aに含まれるガスの分布がここまで高い解像度・感度で観測されたのはこれが初めてのことだ。

このようにして、アルマ望遠鏡と他の望遠鏡を組み合わせることで、天体の様々な姿を明らかにすることができる。

チリ北部のチャナントール高原に建設が進むアルマ望遠鏡は、2012年度中の本格観測開始を予定しており、2013年には全66台のアンテナが設置される。2011年からは、その一部を使った初期科学観測が開始されている。今回のケンタウルス座Aの画像は、アルマ望遠鏡の科学評価データとして観測されたものだ。

アルマ望遠鏡では5月31日から、次の観測シーズン(2013年1月から10月まで)に向けた観測提案の公募を行っている。初期科学観測段階の2倍以上の数のアンテナを使うことができ、解像度も大幅に向上する。また、日本が建設を担当しているアタカマ・コンパクトアレイ(ACA)が追加されることにより、より高画質な画像撮影が可能になる。

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