アルマ望遠鏡、最初の観測提案を募集
【2011年4月4日 アルマ望遠鏡】
南米チリに建設中のアルマ電波望遠鏡を用いた最初の観測提案の募集が発表された。初期科学観測は2011年9月からおよそ9か月間行われる予定だ。
日本を含む東アジア・北米・ヨーロッパ・チリの協力によりチリ・アタカマ高原(注1)に建設中の国際プロジェクト、「アルマ(ALMA)望遠鏡計画」の初期科学観測の募集が発表された。6月中に提出を受け付け、審査を経て採用される計画が決まる。
アルマ計画は、人間の目や光学望遠鏡ではとらえられない電波(ミリ波・サブミリ波 (注2))を観測することで、私たちが住む銀河系やその外にある銀河に含まれる分子ガスや塵、さらに宇宙の始まりであるビッグバンの名残など多岐にわたる観測を行うプロジェクトで、恒星、惑星系、銀河、そして生命の材料などの研究が可能だ。
2013年の完成時には直径12mのパラボラアンテナ54台と直径7mのパラボラアンテナ12台を備え、これらで集められた電波をコンピューター上で結合させることで直径16km以上のひとつの巨大な電波望遠鏡として機能する。初期科学運用で使用されるのは直径12mのパラボラアンテナ16台だが、これだけでも現在稼働中の同種の電波望遠鏡を大きく上回る観測性能を誇るという。
初期科学観測のテーマ提案を世界中の研究者から6月1日〜30日まで募り、この最先端の施設を有効に使い価値ある観測成果をもたらすと期待される提案が審査によりピックアップされる。初期観測の期間は2011年9月末からおよそ9か月間で、プロジェクト参加国の各研究チームが合計およそ500〜700時間の観測時間を分けあって研究を行う。並行して、完成形態へ向けた建設と試験観測も引き続き行われる。
アルマ望遠鏡を運用する合同アルマ観測所長のタイス・ドゥフラウ氏は「私たちは、世界中の天文学者がアルマ望遠鏡を用いた観測を開始するのをとても楽しみにしています。それと同時に、アルマ望遠鏡の完成に向けた作業も全力で進めていきます。このような大きなプロジェクトは、アルマに関わる多くの国の協力なしには成し遂げることができません。この国際協力のおかげでさらに17台のパラボラアンテナの建造もアルマ観測所の敷地内で進んでいますので、今後数か月間の建設の進展には目を見張るものがあるでしょう。」と語っている。
注1:「チリ・アタカマ高原」 山頂施設は標高5000mを超え、晴天率が非常に高く天体観測に適した場所に位置している。山麓施設は標高2900mのところにある。日本との時差は約12時間で、ほぼ昼夜が逆転する形になる。
注2:「ミリ波・サブミリ波」 電波の一種で波長が0.1mm〜1mmの電磁波をサブミリ波、1mm〜10mmの電磁波をミリ波と呼ぶ。人間の目に見える可視光の波長は360nm〜830nm程度。nm(ナノメートル)は100万分の1mm。