電波銀河の外側の巨大構造からガンマ線を発見
【2010年4月7日 広島大学/NASA】
NASAのガンマ線天文衛星フェルミが有名な電波銀河ケンタウルス座Aの外側に広がる巨大な構造を観測し、ガンマ線の放射を発見した。この構造内では、激しい爆発や衝突といった既知のプロセスとは異なるかたちで、高エネルギー粒子が加速されているようだ。
ケンタウルス座A(NGC 5128)は、ケンタウルス座の方向約1200万光年の距離にある電波銀河だ。銀河の中心には太陽の約1億倍もの質量を持つ大質量ブラックホールが存在している。その活動によって、銀河の円盤に垂直な方向に高速の粒子が噴き出し、100万光年もの長さに伸びる両極ジェットとして観測されている。
ケンタウルス座Aの外側には、このジェットによって形成されたと考えられている構造がある。電波で明るく輝いているため「電波ローブ」と呼ばれているが、その大きさは約200万光年で、銀河本体の50倍以上もある。
日本の研究者を含む研究チームがNASAのガンマ線天文衛星フェルミを使ってこの電波ローブを観測した結果、高エネルギーのガンマ線が検出された。このガンマ線は、数千億電子ボルト(電子ボルト:電子を1ボルトの電圧で加速したときに得られるエネルギー)もの高エネルギー電子が、宇宙空間を満たしているマイクロ波(宇宙マイクロ波背景放射)を散乱することで生成されたものであることがわかった。
このような高エネルギー粒子が作られている場所の候補としては、ケンタウルス座Aのジェットの根元付近が挙げられる。この付近には強いX線やガンマ線を放出している「ホットスポット」と呼ばれる領域があり、ここでは超高速のジェットがつくる衝撃波によって電子などの粒子が加速されている。しかし、このような高エネルギーの電子は長い距離を飛ぶ間にエネルギーを失ってしまうため、ケンタウルス座Aの中心で加速された電子がガンマ線を放出できるような高いエネルギーを持ったまま、100万光年以上の範囲にわたって広く分布するとは考えにくい。よって、この電波ローブに含まれている高エネルギー電子は、ジェットの根元ではなく電波ローブの中でたえず加速・生成されていることになる。
これまでに知られている高エネルギー宇宙線加速天体は、数光年以下の大きさで、(前述の)ジェットの根元、パルサーやガンマ線バースト、超新星残骸など、いずれも激しい爆発や衝突などを伴うものであった。ケンタウルス座Aの電波ローブでは、構造自体はゆっくり膨張をしているものの、激しい爆発や衝突は起きていない。銀河の外側の空間で、従来の加速天体とは異なるプロセスで、高エネルギー粒子がつくられている可能性が強く示唆された。