国立天文台の森田教授がチリで死去 アルマ計画に貢献
【2012年5月11日 国立天文台/I Love Chile/NHK】
5月7日(チリ現地時間)、国立天文台の森田耕一郎教授がチリ・サンティアゴで死去した。強盗事件に巻き込まれたとみられる。教授は同国で携わっていたアルマ望遠鏡プロジェクトにおいて、観測画像の高画質化の研究などで大きく貢献してきた。
国立天文台の森田耕一郎教授が5月7日、自身が携わる電波望遠鏡国際プロジェクト「アルマ計画」で滞在していたチリのサンティアゴで死去した。享年58歳。同市内プロビデンシア地区の自宅アパート付近で強盗に遭ったとみられ、10日に25歳の男が逮捕されている。
観測施設から1,000km以上南にある首都サンティアゴには合同アルマ観測所の中央事務所がおかれ、プロジェクト参加国の研究者らの生活・研究の拠点となっている。NHKなどの報道によれば、現場は「日本大使館に近い新市街地の高級住宅街にあるアパートで、比較的治安がよい場所」とのことだ。
アルマ望遠鏡は建設途中ながら2011年9月より初期科学観測が開始され、今年4月には国立天文台のチリにおける研究活動の拠点として「国立天文台チリ観測所」が発足した。
国立天文台およびアルマ望遠鏡プロジェクトは教授の死去に関して「職員一同、深い悲しみを共有しつつ、森田耕一郎教授の遺志を継いで、前に進んでいくことを改めて誓うとともに、教授のご冥福をお祈り致します」とのコメントを発表している。
森田教授の功績(国立天文台「アルマ通信」より)
森田耕一郎教授は、1980年代、野辺山宇宙電波観測所でミリ波干渉計の建設に従事し、複数のアンテナを組み合わせて一つの望遠鏡として動作させる「開口合成法」の研究において世界を代表する研究者の1人でありました。
2000年代になり、日米欧共同プロジェクトであるアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計「アルマ望遠鏡」計画に参加。日本が分担する「アタカマコンパクトアレイ」(ACA)のアンテナ16台の配列設計を行い(画像)、アルマ望遠鏡の性能を最大限に引き出すためのミリ波サブミリ波帯での画像の高画質化の研究において多大な業績を残されました。
その後、2010年にチリに設置された合同アルマ観測所のメンバーとなられ、アルマ望遠鏡のシステム性能評価を行うチームのリーダーという中心的な立場で国際的に活躍されました。
森田耕一郎氏のご冥福を心よりお祈りいたします。