巨星の周りを回る新たな惑星と褐色矮星を発見

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【2012年9月5日 岡山天体物理観測所

東工大、国立天文台、広島大、兵庫県立大などの研究グループが、岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡と高分散分光器HIDESを用いた観測から、巨星の周りを回る惑星と褐色矮星など合わせて8つの天体を発見した。いずれも系外惑星や褐色矮星の形成・発見の可能性を広げる注目の天体だ。


惑星系が発見された巨星の位置

惑星系が発見された巨星の位置。クリックで拡大(提供:国立天文台、以下同)

発見された巨星周りの惑星系の模式図

発見された惑星系の大きさと、中心星からの距離の模式図。左端は中心星の名前。MJ=惑星の質量(木星の○倍)。AU=軌道長半径(1AU=太陽〜地球間の平均距離)。クリックで拡大

見つかった天体は、それぞれ太陽の1.5〜3.1倍、半径は5〜15倍という別々の巨星を公転する6つの惑星と、同一の巨星を回る2つの褐色矮星だ。今回の発見は、それぞれ注目すべき点がある。

まず、かんむり座ο(オミクロン)星で見つかった惑星は木星の約1.5倍の質量で、半径が太陽の10倍を超える巨星で見つかったものとしてはもっとも軽い部類に入る。一般に巨星の周りでは軽い惑星は見つけにくいため、これまでは木星の2倍以上の質量をもつものばかりが発見されていた。今回、比較的軽い惑星の存在が示されたことで、さらに軽い土星やそれ以下の質量の惑星が存在するかどうかが今後の焦点となる。

2つ目は、おおぐま座ο星。太陽の3.1倍の質量をもつこの巨星の周りを、木星の約3倍の質量の惑星が周期約1630日で公転している。太陽の3倍以上の質量をもつ恒星に惑星が見つかったのは今回が初めのことだ。惑星は、中心星から約4天文単位(太陽〜地球の平均距離の4倍)離れているのだが、中心星の光度が太陽の約140倍もあるため、太陽系で最も内側の水星と同じくらいの温度環境にあると考えられている。

光度が大きく重い恒星の周囲では惑星は形成されにくいと考えられているが、今回の発見により、太陽の3倍程度の恒星ならば惑星の形成が可能であることが示された。

へびつかい座ν(ニュー)星の周りには、2つの褐色矮星が発見された。褐色矮星とは「恒星になれなかった星」とも言われ、質量が足りないためにじゅうぶんに核融合を起こして光ることができずに、形成されたときの余熱とガス収縮のエネルギーとで惑星より高温となり、主に赤外線を放射する天体である。

2つの褐色矮星の公転周期がちょうど整数比(約6対1)に近くなっており、「平均運動共鳴」の状態にある可能性がある点が注目される。平均運動共鳴とは、公転する2つの天体が互いに規則的・周期的に重力を及ぼし合う結果、2つの天体の公転周期が簡単な整数比になる現象だ。

褐色矮星が作られる過程については、恒星のように分子雲の分裂による場合や、惑星のように星周円盤内で形成される場合など諸説あるが、2つの褐色矮星が平均運動共鳴にある場合は、これらが星周円盤内で形成され、その後徐々に円盤内を移動し共鳴状態になったことを示している。今回の発見は、褐色矮星も惑星と同じように形成され得ることを示す有力な証拠となるかもしれない。

岡山天体物理観測所では、これまで約10年にわたって観測を継続してきた。それによって、太陽系の木星に相当するような遠方の惑星が発見され始めたのである。また、多くのデータの蓄積により軽い惑星や複数の惑星をもつ恒星も見つかりつつある。今後も観測を続けることによってさらに多くの系外惑星系が発見され、惑星の形成と進化に対する理解が一層進むことが期待されている。


ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、650個を超える「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しており、かんむり座ο星やおおぐま座ο星などが存在する方向を星図に表示できます。ステラナビゲータをご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。