ここ80億年でも進んでいた銀河の「じゃじゃ馬ならし」
【2012年10月24日 NASA】
80億年前にはすでに今のような安定した形状だったと思われていた銀河が、実は徐々に「お行儀よく」秩序だった動きを見せるように変化してきたことが観測から示された。
「これまでは、近傍宇宙の円盤銀河は80億年前には現在に近い形になっており、それ以来あまり変化がないと考えられていました。しかし、今回わたしたちが得た研究結果は全く逆です。銀河は80億年前からも継続的に変化を見せてきたのです」(NASAゴダード宇宙飛行センターのSusan Kassinさん)。
Kassinさんらは、ハワイのケック望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡を利用した銀河サーベイプロジェクト「DEEP2 Redshift Survey」のデータから、銀河の内部運動のようすがわかる544個の銀河をすべて調査した。
現在の宇宙で星生成が行われている銀河は、アンドロメダ座大銀河や天の川銀河のようにきちんと円盤状を保つシステムを持っている。つまり、銀河内部の星やガスそれぞれの勝手な動きよりも、銀河全体の回転運動の方が支配的ということだ。
だが今回の研究では、星生成を示す青色の輝きを見せる銀河で最も遠いものは個々の星やガスの勝手な動きが大きいことが明らかになった。時が経つにつれて無秩序な動きは弱まり、反対に銀河の回転速度は速くなっていた。銀河は徐々に「お行儀のよい」安定した円盤状銀河となっていったのである。
銀河の規模ごとに区分したところ、どの質量でも同様の傾向が見られたが、大質量の銀河ほど秩序ある回転形状を見せている(画像)。
「従来の研究では、現在の銀河とは異なる無秩序な回転円盤を持つ銀河は対象から除かれていました。遠方宇宙では数少ないきれいな形の銀河だけを扱ってきたので、銀河は大して変わっていないと結論づけられてしまっていたのです」(米アリゾナ大学のBenjamin Weiner氏)。
新しい研究成果から、天の川銀河も少しずつ秩序を見せる進化を遂げ、その間に太陽系が育まれたと考えられる。
過去80億年の間、銀河間の合体は急減してきている。それにともなって、銀河同士の衝突で活発化すると考えられている星生成も減るし、星生成が減れば、新しく生まれた星の超新星爆発も減る。このことが、今回の観測で見られた銀河の変化に何らかの役割を果たしていると研究チームでは考えている。
今後、銀河進化のコンピュータシミュレーションで今回のパターンの再現を試みることにより、どのような物理過程が作用しているかを探っていくことができるだろう。