最も遠くで起こった超新星爆発 赤方偏移の記録更新
【2012年11月7日 ケック天文台】
およそ120億光年かなたという、これまでで最も遠方の超新星が見つかった。けた違いに明るいこの種の天体は、ビックバン以後に最初にできた第一世代の星発見への一歩となる。
「今回私たちが発見した超新星は、太陽の100〜250倍もの質量の星が爆発したもので、過去に1例しかない非常に珍しいタイプのものです。爆発の過程も通常の超新星爆発とは全く異なります」(豪スウィンバーン工科大学のJeff Cookeさん)。
数年前から発見されるようになったこうした超光度超新星は、私たちの天の川銀河の近傍ではほぼ見られない。その起源はまだわかっていないが、一部は重い恒星内で電子・陽電子の対生成によって核爆発が引き起こされたものと考えられている。重い恒星が今より多かった昔の宇宙では、こうした現象は頻繁に発生していたようだ。
研究チームでは、このけた違いに明るい天体の謎を解明すべく、100億光年以上遠方、つまり宇宙が生まれてから今までの4分の1の時間も経っていないころの宇宙を調査した。
遠方宇宙までの距離の目安として、遠方から届く光の波長の伸び具合を見る「赤方偏移」があるが、今回の研究では、超新星の赤方偏移の記録2.36(下記〈参照〉)を更新する3.90(約120億光年)の超光度超新星が見つかった(2.05のものも見つかっている)。このころの宇宙では、超光度超新星の発生率が近傍宇宙の10倍以上だったと思われる。
分光観測の結果から判断すると、これらの超新星爆発を起こした恒星は宇宙最初の「第一世代の星」とは違うようだが、その検出に近づく一歩となる発見であることには変わりない。
「ビックバンの直後、宇宙には水素とヘリウムしかありませんでした。現在の宇宙に見られる炭素や酸素、鉄、珪素といった他の元素は、最初に生まれた星の内部での核融合で、あるいはそれらの星が超新星爆発を起こして作られたものです。初代の星は、宇宙がさまざまな元素で満ちていく、その長い過程の枠組みを作り、そこから銀河や星や、惑星が生まれたのです。初期宇宙の調査から、第一世代星を見つけたいと思っています」(Cookeさん)