すばる望遠鏡が最遠方のIa型超新星を発見

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【2011年10月5日 すばる望遠鏡

日本の大学などの国際研究チームが、すばる望遠鏡を用いて100億光年以上かなたのIa型超新星を新たに10個発見した。これまで発見された中で最も遠いIa型超新星トップ10のうち、1位を含む9個を占めるものだ。これらのサンプルから、宇宙の歴史におけるIa型超新星爆発の発生頻度の進化や、Ia型超新星の母天体について新たな知見を引き出した。


観測領域の超新星と、それぞれの出現の様子

観測領域の拡大図。3連になっている挿入図の1つ1つがそれぞれ超新星1つに対応し、超新星爆発前の銀河の姿、超新星爆発が起こったときの様子、そしてその前後を差し引きして超新星を浮かび上がらせた画像となっている。クリックで拡大(提供:国立天文台。以下同)

100億光年かなたのIa型超新星

100億光年かなたのIa型超新星。赤く映しだされた銀河のすぐ上にかすかに出現している。クリックで拡大

超新星は宇宙物理学においてたいへん重要な天体だ。宇宙に存在する酸素より重い元素、特に鉄のほとんどはこの超新星の出現(超新星爆発)の際に生成される。また、そのうちIa型と呼ばれるタイプの超新星は非常に明るく、どれでも明るさが均一なので、標準光源として遠方銀河の距離決定に用いられ、それにもとづく宇宙膨張の測定は宇宙膨張を加速させる謎の「暗黒エネルギー」という物理学上の大問題の発見につながっている。2011年のノーベル物理学賞はまさにこの「遠方超新星の観測による宇宙の加速的な膨張の発見」に対して贈られたものだ(参照:天文ニュース「宇宙の加速膨張の発見で米研究者ら3人がノーベル物理学賞を受賞」)。

京都大学、東京大学、およびイスラエルと米国の研究者からなるチームでは、米・ハワイ島にある「すばる望遠鏡」の主焦点カメラを用いて、かみのけ座付近にある満月程度の広さの領域「すばるディープフィールド」を探索し、150個にも及ぶ多数の超新星を発見した。そのうちの10個が100億光年以上かなた、すなわち100億年以上昔に起こったIa型超新星爆発の姿だった。

これらを解析すると、100億年前の宇宙ではIa型超新星爆発が現在の約5倍という高い頻度で起こっていたことがわかった。この時代には、現在よりはるかに速いペースで鉄などの重元素が生み出されていたことになる。

また、Ia型超新星と一般的な星の形成史を比較することで、星が生まれてからIa型超新星爆発に至るまでの時間スケールも調べられた。Ia型超新星爆発は、連星を組む白色矮星(太陽程度の質量の恒星が燃えかすとなった高密度の天体)で核反応が暴走することで起こると考えられているが、そのパートナーがどのような星なのかはまだはっきりしていない。モデルとしては

  1. 白色矮星と通常の星の連星で、星から白色矮星にガスが降り積もる(降着)ことで起こる
  2. 白色矮星同士の連星の合体で起こる

という2つのシナリオが有力だが、今回の解析結果は、(2)の合体説が一般的に予言するものと非常に良く一致している。

これは、2008年に日本のチームがすばる望遠鏡を用いて世界で初めて示し、その後世界の複数のグループの研究でも確認されたのと同じ結果で、今回のデータはそれをさらに強く裏付けるものだ。ただし、(1)の降着説でも今回のデータを説明する可能性は残されており、最終的な決着にはさらなる研究が必要となる。

すばる望遠鏡では、次世代広視野カメラが完成間近となっている。それを利用してさらに多数の遠方超新星を発見し、貴重なデータを得ることが期待される。

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