「ティコの超新星残骸」のアークが伝えるIa型超新星の起源
【2011年4月28日 Chandra Photo Album】
「ティコの超新星残骸」に、高エネルギーX線で輝くアーク状の構造が見つかった。Ia型超新星爆発は白色矮星同士の合体ではなく、白色矮星と太陽のような普通の恒星の連星から発生したとする説を裏付ける発見だ。
ティコの超新星残骸は1572年にデンマークの天文学者ティコ・ブラーエが観測記録を残したことで知られており、このときは昼間でも肉眼で見えるほど明るく輝いていたという。カシオペヤ座の方向、地球から約1万3000光年離れたところにある銀河系内の天体だ。
NASAのチャンドラX線観測衛星はこの天体の中に、超新星爆発の影響で作られたと思われるアーク(弧)を発見した。
これは前回発見された縞模様(天文ニュース「ティコの超新星残骸に縞模様」を参照)などとは構造もメカニズムも異なるものだと考えられる。このアークは高エネルギーX線として観測され、白色矮星が超新星爆発を起こして伴星の物質を吹き飛ばした時の衝撃波で形成されたと結論付けられた。アークの隣に見られる陰が爆発の中心方向と正反対にあることも、つじつまが合う。
ティコの超新星残骸の元となった超新星爆発は「Ia型超新星」に分類されているが、そのメカニズムとして2つ候補が存在している。1つは白色矮星と太陽のような普通の恒星の連星系で引き起こされるもの、もう1つは白色矮星同士が合体して引き起こされるものだ。
白色矮星同士の合体による爆発の場合、伴星から物質が吹き飛ばされた痕跡が見つかることはありえないとされている。たとえ両方のケースが起こりうるとしても、今回の発見はまぎれもなく「白色矮星と普通の星の連星系」説を支持するものだ。