ティコの超新星残骸に縞模様
【2011年3月29日 Chandra Photo Album】
NASAのチャンドラX線観測衛星が「ティコの超新星残骸」に、これまで超新星残骸では見つかったことのない縞模様を発見した。超新星残骸が地球に降り注いでいる高エネルギーの宇宙線の起源となっている可能性があることを示している。
ティコの超新星残骸は1572年にデンマークの天文学者ティコ・ブラーエが観測記録を残したことで知られており、このときは昼間でも肉眼で見えるほど明るく輝いていたという。地球から約1万3000光年離れたところにある、銀河系内の天体だ。チャンドラX線観測衛星はここに、きれいな縞模様を発見した。
縞模様ができるのは、磁場の強弱が原因だと考えられている。陽子など高エネルギー粒子は、超新星残骸の衝撃波面(外層)を何度も行き来してエネルギーを得ているが、この動きによって外層に磁場の強弱ができる。縞模様として見えているのはこうやってできた、周囲よりも乱流が激しく磁場が強い場所のようで、電子がこの領域にとらえられ、磁力線の周りをらせん運動してX線が発生している。
この領域で生み出されるエネルギーは、地上最大の加速器である大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の100倍にも達する可能性がある。これは、銀河系内で発生すると考えられている宇宙線の最高エネルギーにも匹敵する。
宇宙線は陽子や電子の流れで、銀河系の中の磁場の影響を受けるとすぐに方向が変わってしまうため、個別の宇宙線がどこからやってきたものであるかはわからない。超新星残骸は陽子からなる強い宇宙線の発生源の1つだと考えられており、これまで直接の証拠は得られていなかったが、縞模様部分で陽子が加速されるのだとすれば超新星残骸は強い宇宙線源の有力な候補といえるだろう。
しかし、これほど綺麗な縞模様のパターンが見えたのは予想外であり、理論的にも説明が付かない。理論が不完全なのか、知らないことがあるのか、もしかすると解釈が正しくないのか、理解のためにはさらに詳しい研究が必要である。