自転スピード落ちたら爆発? 超新星のしくみに新説
【2011年9月9日 ハーバード・スミソニアン天体物理センター】
星の一生の最期を彩る超新星爆発。そのメカニズムははっきりとはわかっていないが、爆発前の白色矮星の自転速度が爆発のタイミングの鍵になっていると考えられることがわかった。この考えによれば銀河系には数千個もの「時限爆弾」があるようだ。
スピードを落とすと爆発してしまう―。まるでハリウッド映画のような話だが、最新の研究成果によれば、星の最期を彩る超新星爆発にも同じことが言えるようだ。
超新星爆発には色々な種類があることが知られているが、その中でも特にIa型と呼ばれるものは、真の明るさがすべて一定であると考えられており、それゆえ天体までの距離の測定などにも利用されている重要な現象だ。
このIa型超新星爆発のメカニズムには2説あり、1つは白色矮星(注)が連星となっているもう一方の恒星からガスを奪い、抱え込める質量の限界に達したら爆発するというもの。もう1つは、白色矮星同士の合体というものが考えられている。
多くの天文学者は1つめの、白色矮星と恒星の連星系が爆発前の天体だと考えているが、これにはいくつか問題がある。例えばIa型超新星爆発では水素やヘリウムの存在が確認できていないが、質量の供給元だった恒星の水素やヘリウムはどこに行ってしまったのか、爆発の明かりが暗くなったあとでも伴星が発見できないのはなぜか、などの疑問が未解決のままなのだ。
そこでRosanne Di Stefano氏(米ハーバード・スミソニアン天体物理センター)らは、白色矮星の自転速度が変化する効果を考慮することで、この問題の解決を試みた。
ガスを取り込み続けている間はガスが持っていた重力エネルギーが白色矮星の回転エネルギーとなることで自転の速度が上がる。自転速度が上がると、遠心力によってガスを内側から支えることができるようになるため、超新星爆発を起こすと思われていた限界質量を超えても白色矮星のままで存在することができると考えられる。
そしてガスがもう取り込めなくなると回転速度が徐々に遅くなり、そのうちに限界質量を超えてしまうことで超新星爆発が起きるとDi Stefano氏らは主張している。
回転速度が遅くなるには10億年程度の時間がかかると思われ、その間に伴星はその生涯を終えて白色矮星になってしまう。こう考えると、超新星爆発が起きても伴星が持っていた水素やヘリウムが観測されないこと、そして伴星そのものを発見することができないことも説明がつく。
我々の住む太陽系のある銀河系には、1000年に3個程度のIa型超新星爆発が起きていると考えられている。もしこの回転の効果によって爆発までの時間が引き延ばされているとすれば、地球から数千光年以内のところに何十個もの爆発寸前の白色矮星があることになる。
この話が正しければ、銀河系には数多くの「時限爆弾」があることになりそうだ。
注:「白色矮星」 太陽程度の質量の恒星が一生の最期にガスを放出し(惑星状星雲)、その中核が高密度の星となって残ったもの。