見えてきた月の内部 グレイルによる重力マップが完成
【2012年12月7日 NASA】
探査機「グレイル」のデータから、月の重力マップが新たに作成された。月の内部構造の理解だけでなく、岩石惑星の起源についてのヒントも期待されている。
月を周回しているNASAの双子の探査機「グレイル」によって、これまででもっとも詳細な月の重力場のマップが描かれた。
月の重力場は、月面のクレーターや山などの地形、地下に潜む物質の存在などにより、場所によって微少に異なる。常に同じ距離を保つように飛行する2機だが、重力場によってその距離が微妙に乱れる。この乱れを正確に測定することで、その場所の重力場を把握する。
新たな重力場マップから、地殻構造や火山地形、盆地、大型の中央丘や窪地などの地形の詳細が今までにない高精度で明らかになった。
「この重力場マップから、月の重力場はほぼ地表そのままであることがわかりました。重力場の大きな変化と、クレーターや谷、山などの表面地形とがほぼ一致していたのです」(米マサチューセッツ工科大学のMaria Zuberさん)。
また、月や地球型惑星の内部に刻まれている後期重爆撃期の痕跡も、月の重力場から調べることができる。さらに、月の高地の地殻が比較的低密度であることも判明した。アポロミッションで採取されたサンプルも低密度だったが、それが局所的なものでなく、月面全体の特徴であることがわかる。
「今回の測定によれば、月地殻の平均的な厚さは34kmから43kmとなります。これまでの予想より10〜12km薄いという結果です。これほど地殻が薄いと、月のおおまかな組成は地球に似ていることになります。つまり今回の観測結果は、かつて地球の一部が天体衝突によってちぎり取られ、その破片が月を形成したという「巨大衝突説」を支持するものです」(パリ地球物理学研究所のMark Wieczorekさん)。
2011年9月に打ち上げられた2機の「グレイル」は、2012年1月にそれぞれ「エブ」「フロー」という愛称がつけられた。初期ミッションを無事に果たし、8月30日から12月17日まで追加ミッションを行っている。