月重力測定の兄弟探査機「グレイル」打ち上げ成功

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年9月12日 NASA

日本時間11日未明、NASAの月探査機「グレイル」が米・フロリダ州のケープ・カナヴェラル空軍基地から打ち上げられた。年末年始に兄弟機がそれぞれ月に到着し、約2ヶ月半にわたって月の重力分布を精密に測定する。


「グレイル」打ち上げの様子

「グレイル」打ち上げの様子。クリックで拡大(提供: NASA/Darrell McCall)

月で重力測定を行う2機の「グレイル」

月で重力測定を行う2機の「グレイル」のイメージ図(提供: NASA/JPL-Caltech)

「グレイル」(GRAIL:「重力測定・内部調査機」の略で、「聖杯」を意味する)は、2つの探査機を同一の月周回軌道に乗せ「フォーメーション飛行」しながら調査を行うというユニークなミッションだ()。それぞれの機のスピードやお互いの距離の変化をとらえることで、その直下の重力を測定する。

重力は物質の密度・質量に左右されるため、重力測定から内部構造を知ることができ、そこから月の成り立ちや温度環境の変遷などの歴史に迫る。得られた知見は地球などの岩石惑星の歴史を探るうえでも重要な鍵となる。

当初9日に予定されていた打ち上げは強風により延期となり、10日9時8分(米東部夏時間。日本時間翌11日午前1時8分)に実施された。デルタIIロケットによって軌道まで運ばれた2機からは10時半ごろそれぞれ信号が届き、太陽パネルの展開も確認された。

直線距離にして約40万kmの月まで、かつてのアポロ計画では2、3日で到着したが、「グレイル」は地球や月の重力に身をゆだねながらの「省エネ飛行」のため、約3か月半の長旅となる。A機は今年の大晦日、B機は来年元日に到着し、2012年3月から5月まで調査を行う予定だ。

注:「2機による重力測定」 NASAによる「GRACE」ミッション(2002年〜)も同じ手法で地球の重力を測定している。