地球の月は、はじめ2つあった?
【2011年8月5日 NASA / Nature News】
月の形成過程のシミュレーション結果によると、地球はしばらくの間、2つの月を持っていたかもしれないことがわかった。2つの月ができてから数千万年後に衝突し、今の月の姿になったのかもしれないという。
月は、原始地球に火星サイズの天体が衝突し、地球と衝突天体の破片が混ざり合って形成されたと考えられている。月にも地球にも取り込まれなかった物質については、天体を形成することはなくそのまま宇宙空間に放出されたと考えられてきた。
しかし、Erik Asphaug氏(米・カリフォルニア大学サンタクルス校)とMartin Jutzi氏(スイス・ベルン大学)のシミュレーション結果によると、宇宙空間に放出された物質のうち一部は、月の軌道上の前後60度の角度を成す重力安定ポイント(ラグランジュ点)に落ち着き、直径1,000km程度の天体を形成して生き残った可能性があることがわかった。
数千万年もすると2つの月は安定的なラグランジュ点から外れてしまい、現在の月の(地球から見た)裏側で衝突して、現在のような月になった。
衝突といっても、長い間同じ軌道を同じくらいの速度で回っていた天体同士なので、その衝突速度は惑星間空間から飛び込んでくる小天体と比較すれば非常にゆっくりであり、月の地表を這うように覆いつくしていく。また、衝突の衝撃は地下のマグマ成分を月の表側に押し出した。
以上のように仮定すれば、月は地球から見た表側と裏側で地殻の厚さや鉱物組成、元素組成が大きく異なることもうなずける。
今年9月には月の地下構造の探査に特化したNASAの月探査機「グレイル」が打ち上げられる予定である。「グレイル」の成果によって、この研究のシミュレーション結果が現実のものだったかどうか確かめられるかもしれない。