「でこぼこさ」が月の歴史を紐解く鍵となれるか?
【2011年5月23日 NASA】
NASAの月探査衛星「ルナー・リコナサンス・オービター」が取得した画像から、月表面の基準とする領域の長さスケールと表面の粗さに関係がありそうだということがわかった。月が45億年の歴史の中で表面をどのように変化させてきたのか、その歴史を紐解くヒントとなりうる。
月の表面のようすはおよそ45億年にわたって、天体の衝突によってクレーターが形成されたり海が形成されたりと変化してきている。その月表面の変化について新たな手がかりを得るべく、その「粗さ」(roughness)と「傾斜」(slope)の関係が調べられた。
対象とする領域の長さスケールが異なると、傾斜が変わって粗さも変わってしまう。そのため、調べたい長さスケールに合わせて傾斜を測定し、そこでの粗さの比較を行った(注1)。その結果、例えば古いクレーターは衝突から10億年以上時間が経っており、元のクレーターの形状を保っていないために、新しいクレーターと比較して粗さとスケールの関係は異なっていた。
また高地と海を比較すると、形成してから時間が経っていると考えられている高地では長いスケールで見るとでこぼこしているが、短いスケールであれば滑らかである。しかし比較的最近できたと考えられる海では逆に長いスケールで見ると滑らかであるが、短いスケールで見るとでこぼこしていることがわかった。
このように表面の粗さとスケールの関係を見ることによって、どこが新しく、どこが古いのかという点に一定の指標を与えられる。また、どのように粗さが変化しているのかということを調べれば、月表面がどのように変化してきたのかという謎を解くヒントとなるかもしれない。
注1:「粗さと傾斜」 表面の粗さは基準面とのでこぼこ具合で決定されるが、基準面が傾いている場合はその傾きの効果を考慮しなければいけない。この傾き(傾斜)はどの領域を取るかで変わってしまうため、見たいスケールに応じて傾斜を測定して基準面を決定し、粗さを測定することになる。