氷の存在否定、「かぐや」がクレーター撮影
【2008年10月24日 JAXA プレスリリース】
月周回衛星「かぐや(SELENE)」は、月の南極にあって水の氷が存在するかもしれないと指摘されていたシャックルトンクレーターを観測した。その結果、少なくとも表面に大量の水が存在している可能性が否定された。
1994年に打ち上げられた米国の衛星クレメンタインは、月の南極にあるシャックルトンクレーター内部の永久影(1年を通して、太陽からの光がまったく当たらない場所)に、水の氷の存在を示唆する観測結果を得た。また、1998年に打ち上げられた米国の探査機ルナ・プロスペクターは、同クレーターを含む南極域に、水分子を構成する原子である水素の存在を示す観測結果を得た。しかし、水素が水の氷の形で存在しているかどうかはわかっていなかった。
そこで、「かぐや」に搭載されている地形カメラの観測機器チームは、シャックルトンクレーター内部の永久影を撮像した。
得られた地形情報から、クレーター内部の温度はおよそ摂氏マイナス183度以下の極低温であることがわかった。このことは、数cm以上の厚みを持った氷なら、40億年以上安定して存在できることを示している。しかし、地形カメラがとらえたクレーターの内部には、反射率の高い場所は存在しなかった。つまり、クレーターの底に、水の氷は大量に露出していないことが明らかになったのである。
水の氷は、あったとしてもひじょうに少ない量で土と混ざっているか、あるいは土に隠れてしまっているのだろう。
また、地形カメラの観測機器チームは「かぐや」のデータから、世界で初めてシャックルトンクレーター内部の3次元立体視画像を作成した。
今回の成果は、10月23日発行の米科学雑誌「サイエンス」(オンライン版)に掲載された。
なお、「かぐや」の運用チームでは、永久影が存在するとみられるほかのクレーターについても、今後同様の解析を実施する予定だ。