月には氷は存在しないのか?

【2003年12月6日 Cornell News

われわれの住む太陽系の惑星に水や酸素が存在するかについては、これまでにもずっと探り続けられてきたのだが、今回、地球にもっとも近い天体である月に氷が存在するかどうかについて、新しいデータが報告された。

(月の南極と北極の画像)

波長70cmの電波観測による、月の南極と北極(提供:Bruce Cambell、Arceibo Observatory)

月の氷については、まず衛星クレメンタインによる1996年の観測から、月の南極にあるクレーターの壁に氷が存在する可能性が示された。次いで、1998年に打ち上げられた探査機ルナ・プロスペクターの観測からは水素の存在が示され、そのことから水の存在も示唆されていた。しかし一方で、波長12cmの電波観測では、地表浅いところに氷が存在する可能性はないとの結果が得られていた。そして今回、国立科学基金(NSF)の研究グループの調査結果によると、「月の極にあるとされる厚い氷」の証拠は見つからなかったのだ。

今回、同研究グループはアレシボ天文台の望遠鏡を使って70cm波長での電波観測を行い、月の極付近を調べた。この波長を用いると、地表から5m以上の深さまで調べることができる。その結果、残念ながら、氷があるという証拠は見つからなかった。ルナ・プロスペクターによる水素のデータからは、月の土中に数パーセントの割合に相当する水があると思われており、それらは氷の状態で存在していると考えていたのだが、どうやら氷ではないというわけだ。

では、月に(氷ではない)水はあるのだろうか。水があるとすれば、広く分布した永久凍土のような状態であろうと考えられている。しかしそれを確かめるためには、月に直接行って土を溶かし、質量分光計を使って水を探し出すほかないらしい。月に水が存在するかという課題は、まだ今後も続くようだ。