エルクロス、月に水の存在を検出

【2009年11月16日 NASA

NASAは、10月に行った月探査機エルクロス(LCROSS)による月面衝突実験で得られたデータから、月に水を検出したことを発表した。


(エルクロス(LCROSS)の可視光カメラが噴出物をとらえた画像)

エルクロス(LCROSS)の可視光カメラが、衝突20秒後にとらえた噴出物の画像。クリックで拡大(提供:NASA、以下同)

(近赤外線分光器による観測結果を示したグラフ)

近赤外線分光器による観測結果を示したグラフ。クリックで拡大

(紫外線・可視光分光器による観測結果を示したグラフ)

紫外線・可視光分光器による観測結果を示したグラフ。クリックで拡大

月探査機エルクロスは、10月9日(日本時間)に月面の南極にあるカベウスクレーターに衝突する実験を行った。その後、最重要課題である水の存在有無の確認を含めたデータの詳しい分析結果が待たれていた。

NASAの発表によると、実験では、衝突地点となったカベウスクレーターの底から、物質が2つに分かれて噴出した。

1つ目からは、高角度で水蒸気と細かなちりが噴出、2つ目からは、低角度で重い物質が放出された。これらの物質は数十億年もの間、太陽の光を浴びることなく、月面にあるクレーターの底に眠っていたことになる。

エルクロスの科学チームは、衝突で得られた噴出物に関する膨大なデータの分析をこれまで休むことなく続けてきた。とくに集中的に行われたのは、水の存在を決定的に明らかにできる分光観測データの分析である。

その結果、エルクロスに搭載されている近赤外線分光器で得られたデータが、水蒸気と氷の混合物に見られるスペクトルのモデル(赤線)と一致した(2枚目の画像 黄色の領域が水の吸収バンド)。また、紫外線・可視光分光器が衝突直後に得たデータから、水とちりの化合物に特徴的な輝線(3枚目の画像中 矢印)が検出されたのである。

エルクロスによる発見は、これまで考えられていた以上に、水が大量かつ広範囲に存在している可能性を示す結果となった。

地球上では、南極の氷を掘削して採取した氷床コアが、地球の古代史を知る手がかりとなる。それと同じように、月面の永久影から、太陽系の進化の歴史を知る重要な手がかりが得られると考えられている。また、水やその他の化合物が発見されれば、将来の月面探査の資源にもなる。

エルクロスのプロジェクト・サイエンティストであり、NASAエイムズ研究センターの主任研究員を務めるAnthony Colaprete氏は分析結果について、「両方の噴出の分析から、水の存在が示されました。水やその他の物質の分布は、今後の分析を待たねばなりませんが、カベウスクレーターに水があると言っても、問題はないでしょう」と話している。

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