月面に水分子を発見
【2009年10月1日 Science@NASA】
インド宇宙研究機関(ISRO)の無人月探査衛星「チャンドラヤーン1号」が、月の極域で水の分子を検出することに成功した。ごく微量ではあるが、化学物質としての水そのものが見つかって報告されたのは初めてのことだ。
チャンドラヤーン1号は8月末に通信が断絶し、予定より1年以上早くミッションが終わってしまったが、その前に貴重なデータを地球に送り届けることに成功していた。
水分子の発見につながるデータは、チャンドラヤーン1号に搭載されている月面鉱物マッピング装置「M3」によって得られた。同装置のチームがデータの分析を行ったところ、近赤外線スペクトルに見られた吸収線が、水の分子による吸収のパターンと一致していたのである。水分子(H2O)は、2つの水素原子と1つの酸素原子でできている。M3のデータからは、水素原子と酸素原子1つずつからなる水酸基(HO)も見つかった。
米・ブラウン大学の主任研究員Carle Pieters氏は「月面で水が発見されたと言っても、話題になっているのは湖や海、いやそれどころか水たまりでさえありません。月の表面から数mmの岩石やちりに混ざっている水の分子や水酸基です」と説明している。
水分子は、月面上で日の当たるさまざまな場所で発見され、緯度が高い場所ほど量が多いことも示された。なお、1999年に月をフライバイした土星探査機カッシーニの可視光・赤外マッピング分光器(VIMS)の観測データも水の分子や水酸基の存在を示唆していたが、これまで発表されていなかった。
アメリカ地質調査所の研究者でVIMSとM3の両方のチームに所属するRoger Clark氏は、「両機器のデータは、ほぼ一致します。存在量は正確にはわかっていませんが、含有量は1000ppmほどと思われ、月の表層1tから約900gの水が得られるはずです」と話している。
このほか、2009年6月に月へ接近通過した彗星探査機Epoxiによる観測も、今回の発見を裏付けた。
今回の発見により、月の水の起源や鉱物への影響が新たな疑問として浮上した。謎を解明するべく、今後も何年にもわたって研究と議論が続きそうだ。