最低6億トン?月の北極に水の氷を発見
【2010年3月3日 NASA Feature/NASA Mini-RF】
インド宇宙研究機関(ISRO)の無人月探査衛星「チャンドラヤーン1号」の観測データから、月の北極にある40以上の小さなクレーターに水の氷が発見された。氷の厚さは数m程度で、氷の総量は少なくとも6億トンはあると計算されている。
2008年10月に打ち上げられたチャンドラヤーン1号は、2009年8月に通信が途絶え、予定より早くミッションを終了した。しかし1年足らずの間に集められたデータは膨大で、現在分析が進められている。
チャンドラヤーン1号に搭載されていた11の機器のうち、撮像レーダー「Mini-SAR」は、南北の極にある永久影を観測した。永久影は、常に太陽光があたることがなく極低温で、水の氷を含めた揮発性の物質が存在しているのではないかと考えられてきた。
今回、Mini-SARの観測データから作成された地図を調べたところ、北極にある40個以上の小さなクレーターの内部に、水の氷のものに似た、ある特徴的な情報が見られた。
NASAの宇宙運用ミッション局で月探査用レーダー装置「Mini-RF」計画の主任をつとめるJason Crusan氏は、「分析結果から、これは水の氷を強く示唆するものであると結論付けました」と話している。
水の氷が存在すると判断されたクレーターの大きさは直径2kmから15kmほど。氷は比較的純度が高く、厚みは数m程度とみられている。気になる氷の全体量は、個々の氷の厚みにもよるが少なくとも6億トンほどと計算されている。Mini-SARの観測は地下約1.5mまでに限られているため、氷の量が少なく見積もられている可能性もあるようだ。
今回の発見について、米・月惑星研究所でMini-SARを担当する主任研究員Paul Spudis氏は、「新たな発見で、これまで以上に月が興味深く魅力的な探査対象になりました」と語っている。
※NASAのMini-RF計画:月面に水の氷を探すことを目的としてレーダー装置を月に送る計画。Mini-SARは、同計画で月へ送られた装置のうちの1つ。もう1つは、NASAの月探査機ルナー・リコナサンス・オービター(LRO)に搭載された月探査用レーダー装置「Mini-RF」。