食連星で精度が向上した大マゼラン雲までの距離
【2013年3月13日 ヨーロッパ南天天文台】
約10年間にわたる変光星の観測から、天の川銀河の伴銀河である大マゼラン雲までの距離が誤差約2%以下という高精度で導き出された。銀河に含まれる食連星の明るさの変化を調べて求められた距離は16万3000光年となる。
南半球の空に浮かぶ大マゼラン雲は、天の川銀河のそばにある矮小銀河だ。
Wolfgang Gierenさん(チリ・コンセプシオン大学)らの国際研究チームが、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のラ・シーヤ天文台などで、この大マゼラン雲に属するめずらしい種類の連星を詳しく観測した。その結果、大マゼラン雲までの距離を、誤差2%以下というこれまででもっとも高い精度で求めることに成功した。その数値は16万3000光年となる。
研究チームは、食連星というタイプの天体を観測した。食連星とは、地球から見て2つの星が互いの前を通過しあう軌道を持つため、隠し合って食が起こる連星のことで、その際の明るさの変化から星の大きさや質量などの情報が得られる。こうした情報と、連星系全体の明るさと色から、天体までの距離が正確にわかるのである。
従来は高温の星でこの手法が用いられてきたが、得られる数値はじゅうぶん正確とは言えなかった。今回の研究では、連星の両方が低温の赤色巨星というひじょうにめずらしいペアを8つ観測し、これまでよりはるかに正確な距離が得られたのだ。
天の川銀河のすぐそばの天体である大マゼラン雲までの距離を正確に知ることは、他のもっと離れた銀河までの距離も精度よく測定したり、宇宙の膨張率(ハッブル定数)を決めたりする上でも重要である。
「この手法を向上させて、今後数年間で大マゼラン雲までの距離の誤差を1%以下にしたいと思っています。宇宙論や天体物理学のさまざまな分野に広く役立つ成果となるでしょう」(研究チームのDariusz Graczykさん)。