初期宇宙の楕円銀河はなぜ小さいのか
【2013年3月26日 ハーバード・スミソニアン天体物理センター】
大昔の宇宙では、成長した銀河であるはずの楕円銀河がとても小さい。銀河の進化過程を探るその謎に、1つの答えが提案された。
天の川銀河の近傍に見られる銀河には、おおまかに2つの種類がある。若い星を多く含み青っぽく見える渦巻銀河と、そうした銀河が進化した後の段階と考えられる、年老いた星からなる赤っぽい楕円銀河だ。
こうした分類は、100億光年以上彼方の遠方宇宙、つまりはるか昔の宇宙においてもほぼあてはまるらしいということがここ10年ほどの間にわかってきたが、大きな疑問もある。近傍の楕円銀河は一般的にサイズが大きいが、初期宇宙に見られる類似した銀河は、たとえ質量が同じくらいでも直径は5分の1ほどしかない。同時代の渦巻銀河と比べてもかなり小さいのだ。
他の銀河との衝突などによって銀河が質量を増せば大きさも増すはずで、渦巻銀河の「その後」の姿であるはずの楕円銀河が小さく軽いのではつじつまが合わない。
可視光線と赤外線でのサーベイ観測でこうした遠方の銀河をとらえるCANDELSプロジェクトのMatt Ashbyさん(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)らは、およそ90億〜120億光年の間にある複数の銀河を調べた。星が次々と生まれるコンパクトな銀河の密度や質量、星形成の勢いを調べ、他の銀河との衝突で星形成が誘発されていると結論づけた。
考えられるシナリオは以下のようなものだ。初期宇宙では、銀河衝突により星が活発に生まれる銀河は、10億年ほど経てば星の材料となるガスが恒星となって使い果たされ、やがて小さく縮んだ赤い銀河になる。一方、爆発的な星形成を経ていない銀河はその後大きく成長し、星形成も広範囲で起こる。初期宇宙でのようにガスが使い果たされることなく、楕円銀河になっても大きさがそのまま残るという。