銀河からはぎ取られたガスの中で生まれた青色超巨星

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【2013年4月15日 すばる望遠鏡

銀河の中ではなく、銀河から引きはがされたガスの中で生まれた大質量星が5400万光年彼方のおとめ座銀河団で見つかった。


銀河IC 3418の紫外線画像

宇宙望遠鏡「GALEX」がとらえた銀河IC 3418の紫外線画像。銀河から引きはがされたガスが5万光年もの尾を伸ばし、その中で青色超巨星が生まれた(矢印)。下は、すばる望遠鏡で得られた青色超巨星のスペクトル。通常の星生成活動では説明できない、星表面から吹き出すガスの風の存在を示している。クリックで拡大(提供:国立天文台)

銀河の大集団である銀河団の中心部は、摂氏100万度ほどの高温プラズマとダークマターに満ちている。ここに銀河が落ちてくると、銀河のガスが高温プラズマとの相互作用によってはぎ取られる。こうしたガスの中では、どのような星形成が行われるのだろうか。

この疑問について調べるため、台湾中央研究院の大山陽一さんらは「おとめ座銀河団」に秒速1000kmもの猛スピードで落ち込む銀河IC 3418からはぎ取られるガスを調べた。おとめ座銀河団は5400万光年彼方にあり、銀河団としては私たちからもっとも近いところにある。

NASAの紫外線宇宙望遠鏡「GALEX」による以前の観測で、IC 3418から引きはがされた低温のガスでできた長さ5万光年にも及ぶ尾の中で大質量星が生まれていることがわかっていた。

大山さんらは今回すばる望遠鏡での分光観測などにより、この尾の中に単独に存在すると思われる青色超巨星を発見した。5000万年以上前に尾の中で生まれたとみられるこの大質量星は、銀河内での通常の星生成とはまったく異なる環境で星が生まれる様子について、新たな知見をもたらすものだ。