世界初、Ia型超新星を30倍明るくする重力レンズ効果を測定
【2013年4月24日 カブリIPMU】
真の明るさがどれも同じとされるIa型超新星が、重い天体の重力レンズ効果で30倍も明るく見える現象が世界で初めて発見された。周囲に及ぼす重力レンズ効果によって間接的にその存在が示唆されているダークマターなどについて解明を進める足がかりになると期待される。
米ハワイでの全天サーベイ観測「パンスターズ1」で発見された超新星「PS1-10afx」は、90億光年という遠方にも関わらずひじょうに明るいため、太陽の1000億倍もの明るさを持つ「超高輝度超新星」の一種と考えられていた。
だが通常の超高輝度超新星とは異なる点があり、ロバート・クインビーさん(カブリ数物連携宇宙研究機構特任研究員)が解析したところ、その光の成分や明るさの変化パターンから、この天体が実はIa型超新星であるらしいことがわかった(画像1枚目)。
真の明るさがどれも同じとされるIa型超新星にしては、PS1-10afxはその30倍も明るい。その理由として「重力レンズによる増光」が答えとして出された。重力レンズとは、銀河団などの大質量天体の強い重力により、向こう側に見える天体からの光が曲がって地球に届き、天体像がゆがんだり拡大されたりして見える現象のことだ(画像2枚目)。
重力レンズによるIa型超新星の増光が観測可能であることは数年前から理論上予測されており、今回が世界初の観測例となった。真の明るさがあらかじめわかっているというIa型超新星の特性を利用すれば、見かけの明るさと比べることでどれだけ重力レンズで増光されているかを直接測ることもできる。
重力レンズ効果は、ブラックホールや天体に含まれるダークマターといった直接観測できない重力源を明らかにしてくれる貴重な現象だ。今後多数のIa型超新星などの重力レンズ効果を測定することにより、ダークマターやダークエネルギー、重力理論の解明をさらに進める足がかりになると期待される。