重力レンズで生み出された銀河のインべーダー
【2013年3月7日 NASA】
巨大な重力を持つ銀河団の周辺では、その向こう側にある銀河からの光が曲げられ、実に不思議な姿が見えることがある。数十億光年の彼方に見られる広大な宇宙の現象を、ハッブル宇宙望遠鏡がまざまざと映し出している。
画像は、うお座の方向約20億光年の彼方にある銀河団「Abell 68」付近をハッブル宇宙望遠鏡が赤外線の波長でとらえたものだ。銀河団の巨大な重力がまるでレンズのように作用し、向こう側(より遠く)にある銀河からの光が屈折して見える重力レンズ効果の、その顕著な例がいたる所に現れている。
たとえば、画像左上の明るい楕円銀河のすぐ上にある渦巻銀河は、引き伸ばされて1970年代に流行ったインベーダーゲームのエイリアンのような姿になっている。楕円銀河の左側に見えるのも、同じ銀河のもう1つ別の像だが、こちらはまだ原形をとどめている。
また、画像中央下部に明るく輝く銀河団の上方には、ほぼ線状に引き伸ばされた銀河の数々が見える。よく見ると、銀河団の周囲にもうっすらとゆがんだ銀河の像が円形に映し出されており、銀河団の強い重力の影響がうかがえる。
画像右上に見える天体は重力レンズ効果とは関係ないが、とりわけ興味深い。銀河から紫色のしずくがぽたぽたと垂れているように見えないだろうか。これは、銀河がガスの濃い領域を移動する時に銀河内のガス雲がはぎ取られ、熱せられたものだ。