暗黒物質の分布を詳細に測定 その正体と形状にせまる
【2012年1月23日 IPMU】
数物連携宇宙研究機構などの研究グループが、28個の銀河団の観測から暗黒物質の詳細な分布を求めた。これにより、暗黒物質の正体にせまる理論やその分布の形状について、強い裏付けとなる結果が導かれた。
「暗黒物質」とは、宇宙の質量の大半を占める「隠れた質量」だ。光学的に観測することはできないが、暗黒物質を含む銀河などの天体がその重力で向こう側(より遠く)の天体像を変形させる「重力レンズ効果」(画像1枚目)を利用して、その空間分布を直接測定することができる。
数物連携宇宙研究機構(IPMU)の大栗真宗特任助教を中心とする国際研究チームは、重力レンズ効果を起こしている28個の銀河団を新たに見つけ、それをすばる望遠鏡で詳細に観測した。レンズとなる銀河団の中心部のみに見られる、背景の天体が大きく引き伸ばされたり複数に分裂したりして観測される「強い」重力レンズ効果と、中心部以外の領域ごしに見られる、たくさんの銀河の形状を平均して統計的に検出した「弱い」効果の両方を組みこんで解析し、暗黒物質の分布を広い範囲で精密に求めた。
こうして得られた暗黒物質の銀河団中心への集中度は、宇宙初期に運動エネルギーの少なかった粒子が暗黒物質の正体であるとする「冷たい暗黒物質理論」(下記〈関連リンク〉参照)と一致し、これを裏付けるものであることがわかった。
また今回の測定結果は、暗黒物質の分布が球状ではなく大きくゆがんだ扁平な形状をもつ強い証拠ともなった(画像2枚目)。2年前に同研究グループが発表したもの(参照:2010/4/27「すばる望遠鏡、暗黒物質のゆがんだ分布を明らかに」)と同様の結論が、異なる手法による異なる銀河団の調査からも得られたことで、さらに確実性が増したといえる。
銀河団分布の進化の観測から暗黒物質の性質を詳細に調べる「SuMIReプロジェクト」(すみれ:「すばる望遠鏡撮像・赤方偏移測定」の頭文字)において、今回の研究成果はそのゴールに向けた重要な一歩となる。