世界最速の天文学専用スパコン「アテルイ」始動
【2013年5月29日 国立天文台】
岩手県の国立天文台水沢VLBI観測所で、天文学専用としては世界最速の新スーパーコンピューター、愛称「アテルイ」の本格的な共同利用運用が4月から始まっている。
国立天文台天文シミュレーションプロジェクトは、天文学専用の新しいスーパーコンピューターを水沢VLBI観測所(岩手県奥州市)に設置し、今年4月1日から本格的な共同利用運用を開始している。
この新コンピューターは米クレイ社の大規模並列計算機Cray XC30システムで、水沢ゆかりの歴史上の人物にちなんで「アテルイ」(注1)と愛称が付けられている。
理論演算性能は導入時に502 Tflops(注2)、2014年9月までに1 Pflops以上にアップグレードされる予定で、天文学専用としては現時点で世界最速のシステムだ。国立天文台三鷹キャンパスとも高速回線で接続され、全国の天文学者がリモートアクセスによってシステムを利用することができる。保守管理やネットワーク・周辺環境の整備によって研究者が効率的に天文シミュレーションを行う環境を実現しているのも強みだ。
システムの導入により、より細かい構造に迫るシミュレーションや天体の進化をより長期間追うシミュレーションが可能となるほか、これまでは性能上取り入れることが難しかった物理プロセスを組み込むことも考えられる。
「『アテルイ』は、現時点で世界最速の天文学専用スーパーコンピューターです。これから『理論天文学の望遠鏡』として、惑星系の起源、星の誕生と死、ブラックホール、銀河の形成、宇宙の大規模構造など、さまざまな天体現象の謎を明らかにしてくれると期待しています」(天文シミュレーションプロジェクト長 小久保英一郎さん)。
注1:「アテルイ(阿弖流為)」 かつて水沢付近に暮らし、蝦夷(えみし)のリーダーとして坂上田村麻呂率いる朝廷軍に抵抗した。
注2:「flops」 計算速度の単位。1 Tflops(テラフロップス)、1 Pflops(ペタフロップス)はそれぞれ1秒間に1兆回、1000兆回の演算ができることを意味する。