古い星の最新観測で、ビッグバン理論がさらに強固に

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【2013年6月10日 ケック天文台

古い星の観測と理論モデルを併せた研究で、リチウム同位体の量がビッグバン理論の予測と矛盾しないという結果が示された。ビッグバン理論の正当性をより強固にする結果である。


宇宙初期に形成された恒星

宇宙初期に形成された恒星は、ビッグバン直後の元素合成を反映している。クリックで拡大(提供: Karin Lind, Davide De Martin.)

宇宙は138億年前にビッグバンで誕生したと考えられており、その名残りである宇宙背景放射や、理論予測どおりの軽元素の組成が観測されていることなどで説の正しさが裏付けられている。

だが長年解決されていない問題があった。それは、天の川銀河のもっとも古い星々で観測されたリチウム同位体の量が、ビッグバン後の元素合成で作られると理論上予測される量と一致しないことだった。同位体とは、同じ元素でも中性子の数の違いにより質量などが異なる原子のことで、6Li(リチウム6)が予測される量の200倍、7Li(リチウム7)は3〜5分の1という大きな違いを見せていた。

このたび、英ケンブリッジ大学のKarin Lindさんらが行った最新の観測研究により、リチウム同位体の量はビッグバン標準理論と矛盾しないという結果が発表された。Lindさんらは米ハワイのケック天文台の口径10m望遠鏡で古い恒星を観測し、恒星大気についての理論モデルと併せて解析を行った。6Liは存在量が少ないため観測が難しく、大気中の異なる過程のために観測データのモデル化も慎重さを要するが、ケックI望遠鏡やスーパーコンピューターの能力によってこういった問題を解決した。

「今回の成果で、6Liと7Liの量についての理論と観測との隔たりが大幅に小さくなり、完全な一致も見えてきました。宇宙背景放射などで支えられていたビッグバン標準理論が、これによってさらに強固になるでしょう」(Lindさん)。