板垣さん、わし座に新たな明るい矮新星を発見
【2013年6月13日 VSOLJニュース(300)】
山形の新天体ハンター・板垣公一さんが5月31日、わし座方向に明るい矮新星を発見した。増光がまれな「や座WZ型矮新星」とみられる。
VSOLJニュースより(300)
わし座といえば七夕物語の題材であるアルタイル(ひこ星)を含む夏の代表的な星座の一つです。6月ともなると、夜遅くになれば南東の空にかかっているところを見ることができます。天の川に近い場所でもあり、さまざまな興味深い天体の宝庫でもあります。SS 433やAS 338、わし座V605といった特殊星や、反復新星わし座CIといった名前が頭に浮かぶ方もおられるでしょう。
そのわし座に、このたび日本人捜索家によって、新たに明るい矮新星が発見されました。天体を発見されたのは、超新星の捜索家としても名高い山形県の板垣公一さんです。
2013年5月31.5974日に口径21cm反射望遠鏡での捜索中、10.8等級(CCD、フィルターなし)の新天体をわし座に発見しました。この星像があった位置には5月21.608日の時点では15.5等より明るい天体はありませんでした。正確な位置は以下のとおりです。
赤経: 19時15分01.99秒 赤緯:+07度19分47.1 秒(2000.0年分点) わし座の矮新星の周辺星図
その後の確認観測などから、新星にしては色が青すぎること、および比較的大きな固有運動がみられることが判明し、矮新星ではないかという可能性がもたれました。これをうけたスペインのEnrique de Miguel氏の観測で、周期が0.0554日程度のふたやま状の変動が報告されたことから、この新天体は増光がまれな矮新星「や座WZ型矮新星」の天体であり、報告された変動はその「早期スーパーハンプ」(注)を見ているのではないかという可能性が示唆されました。その後も世界各地で測光観測がなされ、この示唆が正しいことが判明しました。
天体はその後も少しづつ減光しているものの増光(アウトバースト)状態は続いています。早期スーパーハンプはその後6月8日に消失し、代わりに(通常の)スーパーハンプが出現しました。この後もしばらく緩やかな減光が続き、1〜2週間後には急減光が起こると考えられます。や座WZ型矮新星は減光後の再増光がしばしば見られる天体であるため、減光後の再増光の有無も興味深い点として注目されます。
編集追記:三重県亀山市の中村祐二(なかむらゆうじ)さんが5月31.654日に同天体を独立発見している。
注:「スーパーハンプ」 軌道周期よりやや長い周期での光度の変動。