ベテラン衛星「あけぼの」が、太陽活動とバンアレン帯の関連を解明
【2013年9月27日 名古屋大学太陽地球環境研究所】
打ち上げから24年という現役最長寿の衛星「あけぼの」が、地球近辺の高放射線領域「バンアレン帯」における電子増加の条件を明らかにした。宇宙天気予報の新たな手がかりとなる成果だ。
約400kmの高度を飛ぶ国際宇宙ステーション(ISS)の軌道から、高度約3.6万kmの衛星「ひまわり」などの静止衛星軌道までの間には、宇宙放射線(エネルギーの高い電子)が大量に存在する領域「バンアレン帯」(放射線帯)がある。
このバンアレン帯における電子の数が増えすぎると、気象衛星や放送衛星の障害が起こりやすくなる。過去には米国の通信衛星が障害を起こして数か月間復旧しなかった例などもあり、この領域の電子がいつどのくらい増えるのかを予測することは、人類が宇宙を安全に利用するために重要な課題だ。
太陽からのプラズマの嵐(太陽嵐)によりバンアレン帯の電子が10倍から100倍以上に増えることはわかっているが、太陽嵐が起これば必ず増加するというわけではなく、どのようなメカニズムによって電子の数の変化が決まっているのかは不明だった。
名古屋大学太陽地球環境研究所の三好由純(みよしよしずみ)准教授らの研究グループは、磁気圏観測衛星「あけぼの」などの長期観測データを用いて、地球にやってくる太陽風(太陽から噴きだすプラズマの風)がバンアレン帯に及ぼす影響について統計的に解析した。
その結果、スピードの速い太陽風の中に南向きの磁場が含まれていると、数日間にわたって「コーラス」と呼ばれる宇宙の電波が強く発生しやすい状況になり、80%以上の確率で電子の数が増えることが示された。このような状態のときには、オーロラの活動も数日間にわたって活発になる。
24年間にわたって観測を続ける「あけぼの」の長期観測により初めて可能となった今回の成果は、今後宇宙天気予報の精度向上に貢献することが期待されている。2015年度には、さらに詳細なメカニズムの解明を目的とした衛星「ジオスペース」がイプシロンロケット2号機により打ち上げられ、「あけぼの」のデータに基づいた観測計画が進められる予定だ。