太ったブラックホールは銀河の都会育ち
【2013年10月15日 国立天文台】
国立天文台の研究チームが、銀河が密集した環境ほど銀河中心のブラックホールがより重くなるという傾向を統計解析で見出した。銀河同士の衝突合体によってブラックホールの成長が促されることを示唆している。
多くの銀河の中心には、太陽の100万倍を超える重さのブラックホールが存在する。その一部は、周囲のガスを引き寄せて膨大なエネルギーを放出し、明るく輝く「活動銀河核」として観測される。
銀河中心ブラックホールの成長と銀河そのものの成長には密接な関連があると考えられているが、その可能性のひとつとして、ブラックホールを持つ銀河と周囲の銀河との相互作用がある。
国立天文台天文データセンターの研究チームはこれを確かめるため、世界中にある様々な天文データベースを統合的に利用するシステム(JVO)を利用し、巨大ブラックホール約1万個と約7000万天体にも及ぶ銀河のデータを解析した。
その結果、銀河が密集した環境ほど、より重いブラックホールが存在する傾向が見られた。銀河が密集していると、互いに衝突合体が起こりやすい。衝突合体により、銀河内のガスがかき混ぜられて大量のガスがブラックホールに吸い込まれる、あるいはブラックホール同士が合体して、ブラックホールの成長を促す可能性がある。
一方、ブラックホールの重さが太陽の1億倍以下になると、ブラックホールの質量と周囲の銀河密集度に関連性がないという意外な結果も見られた。太陽のおよそ1億倍の重さを境として、ブラックホールの成長過程が変化しているのかもしれないという。
研究チームの白崎裕治さんは「特に、比較的小さな巨大ブラックホールは、まだ観測も少なく未知の面が多いです。 巨大ブラックホールは最初どのように生まれたのかという謎ともからんで、探るべきことはたくさんあります」と今後の研究の展望を語っている。