材料はあるのに星が生まれない楕円銀河
【2014年6月4日 NASA】
赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測により、星の材料となる低温ガスを豊富に含む楕円銀河が6つ見つかった。材料はあるのになぜ星が生まれないのか、X線観測でさらに検証が行われた。
年老いた軽い星ばかりで構成される楕円銀河は、星の材料となる低温ガスが不足しているために新しい星が形成されないと考えられてきた。だが赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測から、低温ガスを大量に含む大型の楕円銀河が6つ見つかった。銀河団の中心部以外の楕円銀河で大量の低温ガスが検出されたのは初めてだ。
低温ガスが豊富にあるにも関わらず、なぜ新しい星が生まれないのか。その謎を探るべく、X線天文衛星「チャンドラ」や地上の望遠鏡でもこれらの銀河を観測したところ、X線を放射する高温ガスや赤外線を放つ低温ガス、それらの中間の温度を持つガスがどれも似たような分布をしていることが明らかになり、高温ガスがじょじょに冷えて、これらの銀河に見られる低温ガスの源となっているらしいことがまずわかった。
だが低温ガスはそれ以上冷えず、星の形成には至らない。その理由を明らかにするのが、低温ガスが豊富な銀河に見られるガスの乱れだ(画像下段)。この乱れは、低温ガスの塊が銀河中心ブラックホールに引き込まれることによって爆発的な物質の放出が起こったことを示している。爆発的な物質放出の際にエネルギーのほとんどは銀河中心部の低温ガスに渡ってしまう。そのため低温ガスの冷却が止まり、星形成が妨げられるのだろう。
一方で低温ガスのない銀河の中心では、高エネルギー粒子のジェットが電波で観測されている。中心のブラックホールに高温ガスが引き込まれることで発生しているものだ。X線観測では、ジェットが周囲の高温ガスにぶつかってできた巨大な穴も見られた。
中心の高温ガスが乱れなくまとまって見えるのは、ジェットが銀河中心部の広い範囲のガスを吹き払ってガスの密度が減り、ガスの塊や乱れが生じにくい状態になっているためだろう。これらの銀河では高温ガスが冷えることなく、低温ガスも存在せず、したがってやはり星形成が起こらない。