天の川銀河の星に、宇宙初代の巨大質量星の痕跡
【2014年8月25日 すばる望遠鏡】
鉄の比率が多い、特異な組成の「宇宙の第二世代星」が見つかった。宇宙で最初に生まれた「初代星」の中に、太陽の100倍以上もの質量を持つ巨大星があったことを示す証拠かもしれない。
くじら座の方向1000光年の彼方に、特異な元素組成の星が見つかった。日米研究チームがすばる望遠鏡を用いて行った分光観測から、質量が太陽の半分程度しかないこの星「SDSS J0018-0939」は、鉄が含まれる比率が太陽の300分の1程度、炭素やマグネシウムは太陽の1000分の1以下であることがわかった。
この特異な組成は、宇宙で最初に生まれた初代星の中に、太陽の100倍以上の重さを持った巨大星が存在していたことを示している。こうした巨大質量星が最期を迎える超新星爆発では、鉄が多く合成、放出されると考えられているからだ。SDSS J0018-0939は、巨大質量の初代星が放出した元素が周囲の水素ガスと混ざってできたガス雲を材料として生まれたとみられる。
計算機シミュレーションでは大質量の初代星が多く作られたと予想されており、実際に太陽の数十倍の重さの初代星が存在したことを示す元素組成の星はこれまでに多く見つかっているが、100倍以上の重さを持った初代星の証拠となる星は見つかっていなかった。
研究チームの青木和光さん(国立天文台)は、「巨大質量星が初代星のなかにどの程度の割合で存在したのか明らかにすることが重要で、そのためにはより多数の初期世代星の探査と観測が必要となります。また、巨大質量星が多数存在したのであれば、次世代超大型望遠鏡TMTなどによる遠方銀河の観測でその集団を直接観測できる可能性も出てくるので、いろいろな方法での研究の進展にも期待しています」と話している。