活動銀河M87のガンマ線フレア、電波でも増光を観測
【2014年9月5日 国立天文台VERA】
おとめ座の銀河M87で、ガンマ線フレアの発生と同時に銀河中心から強い電波が放射されるようすが観測された。大質量ブラックホールを中心部に擁する活動銀河での高エネルギー放射について、詳しく知る手がかりとなる。
M87は、数千万光年彼方にあるおとめ座銀河団の中心に位置する巨大な活動銀河で、その中心部には強力なジェットをともなう大質量ブラックホールが存在する。明るいジェットをともなう活動銀河中心核としては最も近いところにあるため、これまでに多くの観測が行われ、ガンマ線フレアの発生も知られていた。だが、フレアの位置や現象の詳細はわかっていなかった。
国立天文台の秦和弘さんらの国際研究チームは2011年2月から2012年10月にわたり、M87の高分解能モニター観測を行った。観測には、日本と欧州それぞれの、遠い場所にある複数の電波望遠鏡を組み合わせたVLBIネットワークが用いられた。
今回の観測期間中、特に2012年2月から3月に高エネルギーのガンマ線フレアが発生した際に、M87の中心部分が強い電波を放つようすが検出された。高周波数(高エネルギー)ほど振れ幅が大きく、急激にピークに到達していた。一方で、過去にガンマ線放射の可能性が指摘されていたHST-1という領域(銀河中心から約390光年)では変化が見られなかった。
これらのことから、M87中心部にある大質量ブラックホールの近くでフレアが起こったことがうかがえる。
また、中心の変化のようすや周波数ごとの時間差などから、ジェットの見かけの速度が秒速約6万km未満と算出された。過去のもっと明るいガンマ線フレアでの速度はこれより速かったことから、ガンマ線の強度とジェットの速度に相関関係がある可能性も考えられる。