100億光年彼方のクエーサーを複数アングルから観測
【2014年10月23日 信州大学】
約50億光年彼方の銀河団ごしに見える100億光年彼方のクエーサー「SDSS J1029+2623」は、銀河団の強い重力による屈折(重力レンズ効果)を受けて分離した3つの像となって観測されている。2010年にこの分離像のうち2つ(AとB)をすばる望遠鏡で観測した信州大学などの研究グループが、これらの像に違いがあり、クエーサーを異なる角度から見た姿という可能性があることを昨年発表した。
しし座方向の銀河団の重力レンズごしに見える、クエーサーの3つのレンズ像(A、B、C)。ハッブル宇宙望遠鏡で撮影(提供:信州大学、国立天文台、カブリIPMU)
クエーサーとは、ひじょうに遠くにある銀河の中心核がとても明るい輝きを放っているものだ。銀河中心の巨大質量ブラックホール付近がその放射源で、ブラックホールを取り囲むガス円盤の表面からガス流(アウトフロー)が噴き出している。研究グループが観測した分離像の違いは、このガス流の立体的な内部構造を映し出しているのではと考えられたのである。
レンズ像AとBは異なる経路からやってくるので、地球に届くタイミングにおよそ2年の差がある。研究チームでは今年4月、2つの像の違いがこの時間差によるものではなく、角度の差によるものであることを確かめるための追観測を行った。その結果、2010年の観測データから大きな変動はなく、同じタイミングにクエーサーを出発したAとBの像には前回の観測通りの違いが見られることが確認された。
クエーサーを出発したA像とB像は、銀河団の重力による屈折を受けて744日違いで地球に届く(提供:信州大学・国立天文台)
観測される像が確かに立体視されているものであるということをふまえ、アウトフローの内部は一様ではなく、小さなガス塊、あるいは濃淡のムラが存在する複雑な構造であることが示された。今回の観測ではガス塊の密度や光源からの距離に関する大まかなヒントが得られるに留まったが、今後同じような多数のクエーサー分離像を観測することで、アウトフローの全貌解明につながる道筋が作られた。
クエーサーのアウトフローガスを構成するガス塊。真上に噴き出しているジェットは別の現象(提供:信州大学)
〈参照〉
- 信州大学: 100億光年かなたの天体の立体視を確認
- The Astrophysical Journal Letters: Resolving the Clumpy Structure of the Outflow Winds in the Gravitationally Lensed Quasar SDSS J1029+2623 論文プレプリント
〈関連リンク〉
- すばる望遠鏡: http://subarutelescope.org/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
〈関連ニュース〉
- 2013/02/20 - すばるで挑戦 100億光年かなたの天体を立体視
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