初めてとらえた、星の“0歳児”の急加熱
【2015年3月24日 NASA】
オリオン座の方向1400光年彼方の星雲NGC 1977の近辺で、生まれたばかりの星HOPS 383が赤外線で急増光(アウトバースト)するようすがとらえられた。NASAの宇宙望遠鏡「スピッツァー」などの観測データでは、2004年から2006年にかけての増光がまず見つかり、2008年には波長24μmの赤外線で35倍の明るさになった。その後2012年になっても明るさは衰えなかった。
恒星はガスの塊が重力で収縮することで生まれるが、一人前の星の活動である核融合を始める前に、まず収縮と物質降着のエネルギーで輝きはじめる。これが「原始星」、いわば赤ちゃん星だ。原始星の輝きは周囲の濃いガスや塵でさえぎられるが、原始星の熱であたためられた塵が発する赤外線なら透かして見ることができる。
HOPS 383は、わずか15万年しか続かない恒星の最初期段階にある「クラス0」の原始星で、この段階でのアウトバーストがとらえられるのは初めてのことだという。
研究チームではHOPS 383の長期間にわたるアウトバーストについて、不安定になった塵とガスの円盤から恒星に取り込まれる物質が急増したことで起こったのではないかと考えている。物質が集中して注がれた箇所が高熱となり、恒星と円盤両方が急激に熱せられたのかもしれないという。
〈参照〉
- NASA: NASA Satellites Catch 'Growth Spurt' from Newborn Protostar
- The Astrophysical Journal: HOPS 383: An Outbursting Class 0 Protostar in Orion 論文
〈関連リンク〉
- マックスプランク天文学研究所: http://www.mpia.de/
- NASA: http://www.nasa.gov/
〈関連ニュース〉
- 原始星の変化:
- 2013/02/14 - 原始星が放つフラッシュライト
- 2012/03/07 - 明るさが変わる生まれたての星の謎
- 2005/03/22 - X線で輝く星の胎児の謎
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