明るさが変わる生まれたての星の謎

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【2012年3月7日 ヨーロッパ宇宙機関

オリオン座大星雲の分厚いガスとチリにひそむ生まれたての星が激しく明るさを変える様子を、赤外線天文衛星「ハーシェル」がとらえた。原始星や周囲の円盤が作られる最初の段階を詳しく知るうえで新たな手がかりとなりそうだ。


オリオン座大星雲と幼い星々

オリオン座大星雲のガスとチリに囲まれた若い星々。「ハーシェル」の遠赤外線画像と「スピッツァー」の中間赤外線画像を合成したもの。クリックで拡大(提供:ESA/PACS/NASA/JPL-Caltech/IRAM)

オリオン座の三ツ星のすぐ下(南)に肉眼でもよく見えるオリオン座大星雲は、地球から1350光年かなたにあり、最も近くに位置する巨大な星形成領域だ。高温の若い星が放つ強烈な紫外線で加熱されたガスとチリが光っており、そのチリの中には、生まれたての幼い星が隠れている。

星が生まれる過程を簡単に見てみよう。まず、星雲の中で高密度のガスとチリが集まり、重力で凝縮して原始星ができる。その周囲では、渦巻く円盤や、それをさらに取り巻く薄い外層が作られる。こうした周囲の物質の大部分は数十万年かけて原始星に取り込まれ、やがて高温となった原始星は核融合反応を始め、立派な大人の星になる。一方、周囲に残った物質の円盤から太陽系のような惑星が生まれることもある。

Nicolas Billot氏(スペイン・ミリ波電波天文学研究所)らは、赤外線天文衛星「ハーシェル」を使った遠赤外線観測を週1回、6週間にわたって行い、オリオン座大星雲にある原始星を取り巻く円盤の低温のチリを撮像した。画像は、これを成長した高温の星の画像と重ね合わせたものだ。

観測データから、たった数週間の間に原始星の明るさが20%以上の幅で変化するという驚くべきことがわかった。原始星の成長は、数年から数世紀単位の長い期間にわたる出来事とされていたからだ。

一体何が起きているのか。可能性のひとつは、フィラメント状のガスのかたまりが円盤から星付近に送り込まれ、一時的に円盤の内側が加熱されて明るくなるというもの。もうひとつは、低温の物質が内側に溜まり、外側の円盤に影を落とすため一時的に暗くなるというものだ。どちらにせよ、幼い星の誕生の過程は、スムーズで一様なものではないことがわかる。

ハーシェルの観測で、恒星やその周囲の惑星が作られはじめる一番最初の段階で何が起きているか、興味深い知見が得られた。今後の謎の解明に期待が集まる。

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