まさに生まれようとしている星の発見
【2010年6月24日 Yale University】
米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのサブミリ波干渉計(SMA)とNASAの赤外線天文衛星スピッツァーによる観測で、これまでに知られている中では、もっとも形成の初期段階にあると思われる星が発見された。
星は、天の川銀河内のいたるところに存在する「分子雲」とよばれる、ガスやちりが濃く集まった領域で生まれる。分子雲の中では、ガスやちりの濃い領域で物質が集まって高密度の塊(分子雲コア)ができる。その後、分子雲コアは自身の重力で崩壊し、中心部に芯ができて原始星が形成される。原始星はさらに周囲の物質を引き寄せ、中心に密度の高い高温の核が形成される。
たいていの原始星は、周囲を包んでいるちりが発する赤外線で輝いており、その明るさは太陽の10分の1ほどだ。研究チームは、サブミリ波干渉計(SMA)と赤外線天文衛星スピッツァーを使って、地球から約800光年の距離にあるペルセウス座の星形成領域にある分子雲「L1448」を観測した。サブミリ波とは遠赤外線とミリ波の中間の波長帯で、比較的高温で高密度の分子雲や、それに伴う星の形成過程の観測に適している。
その結果、L1448分子雲の中に、分子雲コアの段階と原始星の中間の段階にある天体「L1448-IRS2E」が発見された。L1448-IRS2Eの周りにあるちりからはわずかな放射がとらえられたが、その明るさは太陽の10分の1以下で、星からの放射としてはあまりに暗すぎる。
研究チームの一員で、米・エール大学の研究員Xuepeng Chen氏は「形成途中の星の検出はひじょうに難しいのです。その理由は、この段階がひじょうに短期間で、そのうえほとんど光を発することがないためです」と話している。
また、この天体の中心から高速で噴出するガスの流れも発見されたが、原始星で見られるような現象がこれほど若い段階にある星で観測されたのは初めてだ。
エール大学の助教授Héctor Arce氏は、「星の性質は質量で決まりますが、質量が増大する主要なプロセスがどの段階で起きるのか、まだわかっていないのです。これこそ、わたしたちを研究に向かわせる疑問の1つなのです」と話している。今後、昨年5月に打ち上げられたハーシェル宇宙望遠鏡を使った観測で、星の成長と進化に関する研究を進めたいとのことだ。