太陽の10兆倍以上の赤外線、塵に覆われた銀河「DOG」を多数発見

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すばる望遠鏡の観測データから塵に覆われた銀河「DOG」の探査が行われ、新たなDOGが48個発見された。DOGの赤外線光度は太陽の10兆倍以上にもなると推定され、急成長を遂げつつあると考えられている。銀河とその中心の超大質量ブラックホールの進化を知る上で大きな手がかりとなる成果だ。

【2015年8月31日 すばる望遠鏡

ほぼすべての銀河の中心部には、太陽の10万倍から10億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在している。ブラックホールの質量と銀河の質量に強い相関が見られることから、銀河と超大質量ブラックホールはお互いに影響を及ぼし合いながら成長(共進化)してきたと考えられている。銀河進化を理解するためには、銀河に影響を及ぼす超大質量ブラックホールが銀河とどのような物理過程を経て共進化しているのかを知ることが必要不可欠だ。

共進化を調べるため、愛媛大学宇宙進化研究センターの鳥羽儀樹さんらの研究チームは「DOG(Dust Obscured Galaxy)」と呼ばれる、塵に覆われた銀河に注目した研究を行った。DOGは可視光線では極めて暗いが赤外線で明るいという特徴をもち、その中心のブラックホールは今まさに急成長しているような「成長期ブラックホール」であることが理論的研究から期待されている。

また、DOGの多くが、銀河の星生成活動が最も活発だったと考えられている時代(80~100億年前の宇宙)に集中的に存在していたことも知られている。DOGと中心のブラックホールは、両者が共に急成長しているような興味深い段階にあり、共進化の物理を解明する上で重要な「共進化途上期」にあると期待できる。しかし、DOGは可視光線で非常に暗い上に空間個数密度も低いため、可視光線での探査で多数のDOGを発見しその統計的性質を明らかにすることは困難だった。

そこで鳥羽さんらは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)」で得られた初期データを用いてDOGの探査を行った。HSCによる広視野で高感度の観測と、NASAの赤外線天文衛星「WISE」などによる赤外線データを比較することで、新たに48個のDOGが発見された。

DOGの可視光線、近赤外線、中間赤外線の画像
DOGの波長別画像。左:可視光線(HSC)/中央:近赤外線(ヨーロッパ南天天文台ビスタ望遠鏡を用いた広域近赤外線探査計画「バイキング」)/右:中間赤外線(NASAの赤外線天文衛星「WISE」)(提供:愛媛大学/国立天文台/NASA/ESO)

発見されたDOGの赤外線光度は太陽の10兆倍以上にもなると推定され、DOGが極めて明るい天体種族であることがわかった。DOGの明るさの波長依存性や個数密度の光度依存性などを踏まえると、赤外線で極めて明るいDOGの中心部に急成長を遂げつつある超大質量ブラックホールがあると考えられる。

この成果は銀河と超大質量ブラックホールの共進化の謎を解明する上で、これまでにはない観測的視点から大きな手がかりを与えうるものだ。特に、赤外線で非常に明るい塵に覆われた銀河に本当に活動的なブラックホールが存在しているのかどうかはこれまで謎だったが、今回の研究によってその存在が確認できた。

「DOG探査という点では、現状ではHSCの独擅場と言えます。HSCの観測から今後、数千個のDOGの発見が見込まれています。そのデータに対してX線などの多波長データを併用し、DOGやその中心のブラックホールの性質をより詳細に調べていきたいと考えています」(鳥羽さん)。

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