遠方のガス雲に見えたかもしれない第一世代の星の痕跡
【2016年1月13日 RAS】
ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)による観測から、宇宙で一番最初に誕生した星の痕跡を含むと思われる古いガス雲が発見された。ガス雲はビッグバンから約18億年しか経っていない遠方宇宙にあり、重元素(炭素や酸素、鉄など)の割合が太陽の1000分の1以下と非常に小さい。
「重元素はビッグバンでは作られず、その後に誕生した星の内部で作られます。反対に、宇宙で一番最初の星は重元素を含まない宇宙初期のガスから作られたもので、現在私たちの近傍の宇宙に見られる星(重元素を含むガスから誕生した星)とは性質が大きく異なります」(豪・スインバーン工科大学 Neil Crightonさん)。
第一世代の星(種族IIIの星とも呼ばれる)は誕生してすぐに超新星爆発を起こし、重元素を周囲にばらまく。周囲のガスには第一世代の星の痕跡が残ることになるが、その中の重元素の割合は大きくないはずだ。これまでに見つかってきたガス雲の重元素率は高く、第一世代より後に作られた星からの元素が含まれていたのだろう。「今回発見したガス雲は、第一世代の星に由来する重元素だけを含むと考えた場合に想定される極めて低い重元素率を示した、初の例なのです」(豪・スインバーン工科大学 Michael Murphyさん)。
「今回発見したガス雲では、炭素とケイ素の割合を計測できました。しかし、その数値は決定的なものとは言えず、後の世代の星による可能性も残っています。もっと多くの元素を検出できる、新たなガス雲を発見する必要があります。それらを調べることによって初めて、宇宙で最初に誕生した星による独特のパターンを検証することができるでしょう」(米・セント・マイケルズ大学 John O'Mearaさん)。
〈参照〉
- RAS: Ancient gas cloud may be a relic from the death of first stars
- MNRAS: Possible Population III Remnants at Redshift 3.5 論文
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ南天天文台(ESO): http://www.eso.org/
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