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2015年 皆既月食

月食のしくみ

月食が起こる理由

宇宙空間では、太陽に照らされた地球の後ろ側(夜の方向)に地球の影が伸びています。地球のまわりを回る月がこの影の中に入ってくると、月面にその影が落ち、月食が起こります。このとき太陽‐地球‐月は一直線に並んでいますから、月食は必ず満月のタイミングで起こります。

しかし反対に、満月になるたびに月食が起こるわけではありません。これは、月の公転軌道が地球の公転軌道(つまり、地球の影の中心が位置する場所)に対して5度ほど傾いているからです。この傾きのために、満月はたいてい(地球の公転軌道に対して)地球の影の上下にずれます。ちょうどいい位置で満月になると、地球の影と重なり月食となって見えるわけです。

地球の影の大きさ(見かけの直径)は、月3個分ほどです。この影の中に月が全部入ってしまう状態を「皆既食」と呼び、そのような皆既状態が見られる月食を「皆既月食」と呼びます。月が地球の影の中心に近いところを通れば、皆既状態が長く続くことになります。今回の月食では月が地球の影の端近くを通るので、皆既の継続時間は12分間と短くなります。

また、影の一部だけが月を隠している状態は「部分食」と呼び、月食全体を通じて部分食しか見られない月食を「部分月食」と呼びます。皆既食の前後にも部分食が起こっていて、月が地球の影の中を動いていくにつれて白い満月→部分食→皆既食→部分食→白い満月、と変化していきます。

さらに、地球の影(正確には「本影(ほんえい)」)の外側には、一回り大きな「半影(はんえい)」が広がっています。この半影の中に月が入っている状態を「半影食」と呼びますが、半影は薄いため、半影食のときに月が暗くなっているようすは目で見るだけではわかりにくいかもしれません。

地球の影の中を月が通過する

地球を回る月が、地球の影の中を通るときに起こる。

なぜ短い?たった12分の皆既食

2015年4月4日の月食では、月が影の中に全部入りこむ「皆既食」が12分間しか続きません。一方、昨年10月8日の月食は、この皆既食を1時間見ることができました。

これは、月が地球の影の中心あたりを通るか、それとも端の方を通るかによって違います。

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皆既食の継続時間の違い

皆既月食が赤く見える理由

皆既食のときには月全体が地球の影の中に入っているので、月に太陽の光が当たらず月がまったく見えなくなってしまうように思います。しかし実際には月を見ることができます。これはなぜでしょうか。

地球の大気の中を太陽光が通り過ぎるとき、その光は大気の影響で曲げられて(屈折して)月まで届き、ほんのりと月を照らします。このとき、光の成分のうち波長の短い青い光は大気に散乱されるためほとんど月まで届きません。波長の長い赤い光は散乱されにくく、大気中を通過していくので月まで届くのです。

皆既食中の月の色は「赤銅色(しゃくどういろ)」と呼ばれることが多いのですが、月食ごとにその明るさや色は異なります。地球の大気中のちりや水蒸気の量によって、ひじょうに濃い茶色や赤色のように見えることもあれば、明るいオレンジ色のように見えることもあります。その点も注目しながら観察してみましょう。

地球大気を通った赤い光が月面を照らす

地球大気を通った赤い光が月面を照らす。