【特集】土星(2021年)

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2021年の土星は7月~11月ごろに観察シーズンを迎えます。0等級と明るいのでよく目立ち、街中でも簡単に見つけられます。

天体望遠鏡で観察すると環が見えます。環の傾きが小さくなっているのがわかるでしょう。衛星タイタンも見えるかもしれません。

土星を見つけよう

明るい黄白色の星

2021年の土星は「やぎ座」にあり、夏から秋に宵空で見やすくなります。明るさは約0等級で、街中でも肉眼で簡単に見つけられます。「南の空に見える、クリーム色の明るい星」と覚えておけばわかりやすいでしょう。

今年は秋ごろから木星も見ごろを迎えます。木星は土星より明るく、土星の東(南を正面として左側)にあります。色や明るさの違いで区別が付けられます。

2021年8月中旬 22時の星図

2021年8月中旬 22時の空(東京)。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータで星図作成)。
6月(0時)7月(23時)8月(22時)9月(21時)10月(20時)11月(19時)12月(18時)

土星に関する現象カレンダー

2021年6~12月ごろに起こる、土星と月との接近などは、以下のとおりです。月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。

日付 現象備考
5月 9日 西矩(せいく)太陽から90度西に離れる(日の出のころ南に見える)
黄道座標系では3日
5月24日 留(りゅう)この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる
6月27日 月(月齢17)と並ぶ
深夜~明け方
7月24日 月(月齢15)と接近
›› 解説
宵~明け方
8月 2日 衝(しょう)
›› 解説
太陽の反対に来る(深夜に南に見える)
8月21日 月(月齢12)と並ぶ
未明
9月17日 月(月齢10)と並ぶ
夕方~未明
10月11日 留(りゅう)この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる
10月14日 月(月齢8)と接近
›› 解説
夕方~深夜
11月5日 東矩(とうく)太陽から90度東に離れる(日の入りのころ南に見える)
黄道座標系では10月30日
11月10日 月(月齢6)と並ぶ
夕方~宵
12月 8日 細い月(月齢4)と並ぶ
夕方~宵
1月上旬
~中旬
水星と接近
›› 解説
夕方
最接近13日ごろ
2月 5日 太陽と同じ方向に来る(見えない)

土星は2022年1月上旬以降、太陽に近づいて見えにくくなり、2月上旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。明け方の南東の空に見えるようになるのは3月下旬ごろからです。

木星も見ごろ

今年の秋ごろからは、土星とともに木星も見ごろを迎えます。人気の2惑星を観察して楽しみましょう。

【特集】木星とガリレオ衛星(2021~2022年)

モバイルアプリを活用

星空ナビ

無料モバイルアプリ「星空ナビ」は、スマホを空にかざすだけで、その先にある天体などの情報を教えてくれます。ナビゲーション機能を使えば土星の方向まで星空ナビが案内します。

近いうちに起こる天文現象だけでなく、最新の天文ニュースもスマホに届きます。土星を見るだけでなく、探査や研究のニュースを通じて詳しく知ることでも楽しめます。また、1年間の天文情報をいつでも見られるなどの特典が得られる有料プランもあります。

星空ナビ

iステラ・スマートステラシリーズ

iOS用の「iステラ」「iステラ HD」、アンドロイド用の「スマートステラ」も、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、土星の位置や周りの星の名前などが簡単にわかります。

App Store
iPhone/iPod touch用「iステラ」
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Google Play で手に入れよう
Android用「スマートステラ」
各社の「アプリ取り放題サービス」でもご利用いただけます

スマートステラでのシミュレーション

やぎ座で土星と木星が並んで見える光景をスマートステラでシミュレーション。画像クリックで表示拡大。

望遠鏡で環を見よう

土星の環を見るためには天体望遠鏡が必要ですが、それほど大口径のものや高い倍率でなくても大丈夫です。双眼鏡でも、手振れを抑えれば「真ん丸ではなく、何となく楕円っぽく見える」ことはわかるでしょう。手持ちの道具があれば、まずそれを土星に向けてみてください。

›› 天体写真ギャラリー「土星(2021年)」

土星

探査機「カッシーニ」が撮影した土星。表面の縞や極域の六角形の模様、環の中ほどにあるカッシーニの間隙などが鮮明に見える。画像クリックでリリース元ページへ(クレジット:NASA / JPL / Space Science Institute)。

公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で土星を見ることができ、環の中にある「カッシーニの間隙」と呼ばれる隙間や、8等級の衛星「タイタン」も見えてきます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。
※新型コロナウイルス感染症対策として、事前申し込みや人数制限などの可能性があります。詳しくは施設やイベント主催者などにご確認のうえ、安全に注意してご参加ください。

星ナビ2021年10月号 紹介記事

「星ナビ」2021年10月号で土星の環を8ページ特集。木星と土星の観測ポイントも8ページ特集。

変化する環の見え方

土星は地球と同様に傾いた状態で公転しているため、土星の赤道面上に広がっている環の見え方(見かけ上の太さ)は、年々変化します。2017年5月に土星の北半球が夏至を迎え、土星の北側が最も地球(太陽)の方向に傾いたため、環も太く見えるようになりました。

それから4年が経過した今シーズン、環の見え方は細くなり、環の南側に土星の本体がよく見えるようになっています。

環の見え方の変化(2020~2022年)

2020年から2022年までの環の見え方の変化。画像クリックで表示拡大(北が上)。環の下(南)に土星の本体が見えている。

環の見え方の変化(1995~2019年)

1995年から2019年までの環の見え方の変化(撮影:mtajimaさん)。画像クリックで表示拡大、撮影者名クリックで天体写真ギャラリーのページへ。1995年に環が消失→2002年に(南側に)傾き最大→2009年に環が消失→2017年に(北側に)傾き最大、という変化がわかる(南が上)。

2025年には地球や太陽から見て環が真横を向くような位置関係となるために、見かけ上土星の環が消えてしまう「環の消失」が起こります。さらにその後は土星の南半球が見やすくなるのに伴って再び環が太くなっていき、2032年には反対の南側の面が一番広く見えるようになります。

ステラナビゲータで
シミュレーション

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、土星の環の見え方や衛星タイタンの位置などを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。

▶ 体験版はこちら。1か月間無料で機能をお試しいただけます。

土星を撮影してみよう

カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。

惑星を撮影しよう CMOSカメラで動画撮影、ステライメージで処理

※リンク先ページはステライメージ8での処理例ですが、最新版のステライメージ9でも同様の手順で処理が可能です

「星ナビ」連載記事:

  • 2018年6月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 1. 惑星撮影用の望遠鏡とカメラ」
  • 2018年7月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 2. 惑星撮影用の準備と実際」
  • 2018年8月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 3. 惑星の動画撮影」

星ナビ2018年6月号 紹介記事

星ナビ2018年7月号 紹介記事

星ナビ2018年8月号 紹介記事

オンラインショップ

アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡などを多数取り扱っています。環を自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズ、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。

天体望遠鏡やグッズはアストロアーツオンラインショップで

土星に関するマメ知識

土星は大きさ(環を含まない、赤道部分の直径)が地球の約9倍ある、木星に次いで太陽系で2番目に大きい巨大ガス惑星です。太陽からおよそ14億km離れており(太陽~地球の約10倍)、30年かけて公転しています。

表面には木星と同様に縞模様が見られます。また、北極域には六角形の不思議な模様が存在しています。

土星最大の特徴といえば「環」でしょう。環は主に、直径数cmから数mの氷の粒が同心円状に集まってできていて、ところどころに隙間が見られます。幅(明瞭な部分)は土星本体の約2.3倍のところまで広がっていますが、厚みは数百mほどしかありません。

環

探査機カッシーニが撮影した土星の環。画像クリックでリリース元ページへ(クレジット:NASA / JPL / Space Science Institute、以下同)。

衛星

土星には80個以上の衛星が見つかっていて、太陽系の惑星で最多です(2021年6月時点)。そのうちとくに興味深いのは、タイタンとエンケラドスです。

タイタンは土星最大の衛星で、窒素を主成分とする厚い大気を持っています。メタンの雨が降り、表面に液体のメタンやエタンの川や湖が存在しています。

タイタン

可視光線+赤外線で撮影したタイタン。大気越しにうっすらと地形が見える。

タイタン

近赤外線で撮影したタイタン。大気を通して「Senkyo(仙境)」という地形がとらえられている。

エンケラドスでは、地下から水蒸気が間欠泉のように噴き出している現象がとらえられており、地下に液体の水が存在すると考えられています。

エンケラドス

エンケラドス。北半球にはクレーターが多く存在し、南半球には筋模様が見られる。

エンケラドス

エンケラドスの南極域から噴出する水蒸気。

ほかにも、巨大なクレーターを持つミマス、表面の色がきれいに二分されているイアペタス、環を安定させる役割を果たす羊飼い衛星のプロメテウス、パンドラなど、面白い衛星が多数あります。

エンケラドス、環、タイタン

手前からエンケラドス、環、タイタン。

多数の衛星

多数の衛星。(左)ヤヌス、(中央)パンドラ、(中央上)エンケラドス、(右)ミマス、(右端)レア。

探査機カッシーニ

土星探査機「カッシーニ」は2004年から2017年までの13年間、土星の大気や模様、環の構造、衛星の特徴などを詳しく調べました。前述したタイタンやエンケラドスに関する発見など科学的な成果だけでなく、数々の美しい画像も私たちに届けてくれました。多数の衛星が環や本体の細かい模様と共に写し出されるのは、土星の近くを飛び回る探査機の視点ならではです。

カッシーニの探査のハイライト(クレジット:NASA / Jet Propulsion Laboratory-Caltech)。