冬の定番天文現象「ふたご座流星群」。12月14~15日ごろを中心に、たくさんの流れ星が飛びます。
深夜以降は月明かりの影響を受けますが、月から離れた方向を広く見渡すと流れ星が見える確率が高くなります。
寒さ対策を万全にして、安全やマナーに気をつけて、流れ星を待ってみましょう。
目次
ピークは14日22時ごろ
2022年のふたご座流星群の活動が最も活発になる「極大時刻」は、12月14日22時ごろと予想されています。つまり、12月14日の宵から15日の明け方にかけてが、最も観察に適しています。
見える数の予想と見やすさ
極大予想の14日22時ごろはちょうど月の出のタイミングにあたります。空がすっかり暗くなって(天文薄明の終了、東京では18時ごろ)から月の出までは、暗い空の下で観察できます。流れ星が飛ぶ中心となる放射点(›› 解説)の高度は22時ごろに40度ほど(東京の場合)まで上がっているので、まずまずの条件と言えそうです。
それ以降は15日の明け方までずっと月明かりの影響を受けることになります。そのため暗い流れ星は見えなくなってしまうので、目にできる数は減ってしまいます。一晩を通じて、見晴らしが良いところで1時間あたり15~20個程度(21~22時ごろはやや多めで20~25個程度)と予想されます。
郊外では月だけでなく街明かりもあることや、視界の広さ、空気の透明度なども見え方に影響するため、流星数は空の条件の良いところに比べて半分から3分の1ほど(1時間あたり5~10個程度)になると予想されます。「条件の良いところでも月明かりのために少ない」と考えて、出かけずに身近で気楽に楽しむのも良さそうです。ふたご座流星群の流れ星は明るいものも少なくないので、市街地でも数個は見えるかもしれません。
極大の前後の日に観察すると見える流れ星の数はさらに減りますが、普段の(活発な流星群のない)時と比べれば流れ星を目にできる可能性が高い時期です。寒い時期なので無理は禁物ですが、暖かい服装で少し長めに空を見上げて流れ星を待ってみましょう。
参考リンク:
- 2022年のふたご座流星群の情報(日本流星研究会 佐藤幹哉さん)
日にち、時間帯、空の条件に応じた個数予想など - ふたご座流星群解説(日本流星研究会 内山茂男さん)
流星の明るさを考慮した出現条件など - ふたご座流星群の観測条件(流星電波観測国際プロジェクト)
他の年の条件や、昼でも観測可能な電波観測について - ふたご座流星群 天体写真ギャラリー 【2022年】 【2021年】 【2020年】(アストロアーツ)
1年間の天文現象を解説 「アストロガイド 星空年鑑」
「アストロガイド 星空年鑑」は1年間の天文現象を書籍と番組で詳しく紹介。シミュレーションソフトで現象の見え方なども調べられます。
2023年も、1~2月のズィーティーエフ彗星や3月の金星&木星の大接近、9月21日のアンタレス食、好条件の流星群など、楽しみな天文現象がたくさんあります。星空年鑑で、1年分のスケジュールを確認しておきましょう。
観察のポイント
空を広く見渡そう
流星群の流れ星は放射点を中心として四方八方に飛びますが、これは「放射点の方向にだけ流れ星が飛ぶ」ということではなく、「流れ星の光跡を反対に(流れ始めた方向に)たどっていくと放射点に到達する」ということです。つまり実際には、流れ星は方角や高さに関係なく、空のあちこちに流れます。
したがって、放射点の方向だけを見るのではなく、広い範囲を眺めることがポイントです。広場や校庭、河川敷など視界の開けたところが観察に適しています。集中しすぎると視野が狭くなってしまうので、なるべくリラックスして空を広く見渡すようにすると良いでしょう。
月が昇ってきた後の時間帯には、月から離れた方向を中心に眺めると流れ星が見やすくなります。同様に、住宅地や自宅ベランダなど視界が限られるところでは、街明かりや街灯がない方向を中心に眺めてみましょう。一般的に低空は街明かりや大気の影響を受けて見え具合が悪くなるので、高いところを眺めるほうが流れ星を見つけやすいでしょう。
15分くらいは見続けてみよう
1時間に20個の流れ星が見えるとすると、計算上は平均して3分に1個のペースで見えることになりますが、流れ方はランダムですので、立て続けに数個見えることもあれば10分以上も見えないことも珍しくありません。1つも見えないからと数分で諦めるのではなく、15~20分くらいは見上げてみましょう(ただし、寒いのであまり無理はしないようにしましょう)。
宵のころは西の空に「夏の大三角」、南西に木星、天頂付近に「秋の四辺形」、北から東に「カシオペヤ座」や「プレアデス星団(すばる)」、見ごろを迎えている火星などがあります。深夜になると放射点のある「ふたご座」が天頂に、「冬の大三角」や「オリオン座」が南の空に広がり、華やかな星々が流れ星の通り道を彩ります。明け方には南東の空に「しし座」、北東の空に「北斗七星」が高く上ります。こうした星座や惑星も楽しみながら、流れ星が飛ぶのを待ってみてください。
寒さ対策を万全に
寒さ対策は、ふたご座流星群の観察で一番大切なことといえるかもしれません。寒いと注意力や判断力が低下し、落ち着いて空を見上げるのが難しくなったり動作が鈍って思わぬ事故につながったりすることもあります。
- 重ね着をし、帽子やマフラー、手袋などの防寒具を用意。
- 携帯カイロ、夜食、温かい飲み物なども準備。
- 家の近くで見るのであれば、無理をせず時々室内で休憩を。
- ヒーター等を利用の場合は明かりや音、安全に気をつけて。
そのほかのポイント
- 流れ星を観察するために長時間夜空を見上げ続けていると首が痛くなります。アウトドア用のチェアやベッドがあればベストですが、安全な場所であればグラウンドシートに寝転がって見るのも快適です(寝袋や断熱マットも使用しましょう)。
- 大騒ぎしない、車や足元に注意する、子供だけで行動しないなど、マナーや安全にもじゅうぶん気をつけましょう。新型コロナウイルス感染症対策(人同士の間隔を空けるなど)も心がけてください。
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流れ星が見える仕組み
ふたご座流星群とは
一年のうちある決まった時期に、星空の中のある点の付近を中心として流れ星が飛ぶ現象が流星群です。確定した流星群は現在約110個が知られていますが、ふたご座流星群はしぶんぎ座流星群(1月4日ごろ)、ペルセウス座流星群(8月13日ごろ)とともに「三大流星群」の一つとして数えられる、活動が活発な流星群です。
ふたご座流星群は、毎年12月14日前後に多くの流れ星が飛びます。活動が安定しており、ほぼ期待どおりに流れ星を見ることができます。「夜が長い」「放射点が一晩中地平線上にあり、深夜に高く上る」ということもあり、寒さを別とすれば一年で最も見やすい流星群といえます。
放射点
流星群の流れ星は、天球上のある点の付近を中心として四方八方に放射状に流れるように見えます。この点を「放射点」と呼び、放射点の位置する(または放射点の近くの)星座や恒星の名称が流星群の名前として付けられます。ふたご座流星群の場合は、ふたご座の2等星カストルの近くに放射点があるので、この名前で呼ばれています。
地球が塵の集まりとぶつかると、流星群の流れ星は雨のように平行に降ります。平行に飛び込んでくる流れ星が放射点を中心として放射状に流れるように見えるのは、一直線の道路の両端が遠方の一点から伸びてきているように見えるのと同じ理由です。
塵が宇宙空間を同じように移動した場合の、流れ星の見かけの動きを考えると、放射点付近では経路が短くなり、放射点から離れるほど経路が長く見えます。とくに放射点では、流れ星は観察者に向かってくるように見えます(静止流星と呼びます)。
※放射点付近では必ず短くなりますが、放射点から離れれば必ず長くなるとは限りません(塵の動きが小さければ、放射点から離れていても経路は短くなります)。
ふたご座流星群の起源
塵を放出して流星群の原因となる天体を母天体と呼びます。この母天体の軌道と地球の軌道が交差していると、毎年同じ時期に地球がその交点付近を通る際に、塵の集まりと地球がぶつかることになります。したがって、流星群の流れ星は毎年同じころに同じ方向から飛んでくるように見えるのです。
母天体の軌道の一部にだけ塵が集まっていると、年によって流星群の活動に差が見られる(特定の年だけ活発になる)ことになりますが、ふたご座流星群の場合は塵が軌道全体に広がって分布していると考えられます。すると毎年のように多くの塵と地球とがぶつかることになるので、ふたご座流星群は毎年安定して多くの流れ星が見られるのです。
母天体は多くの場合は彗星ですが、ふたご座流星群の場合は約1.4年周期で太陽系を巡っている小惑星ファエトン((3200) Phaethon)と推定されています。一般に小惑星は彗星のように尾をたなびかせ塵を放出することはなく、ファエトンも現在は活動を停止していると考えられていましたが、2013年に活動が観測されたという報告があり、その正体や性質に注目が集まっています。日本では探査機でファエトンを観測する「DESTINY+(デスティニープラス)」というミッションを進めています。
ふたご座とは
兄カストルと弟ポルックスの双子をモデルとしたふたご座は、ちょうど冬が見ごろの星座です。明るさが近い白色のカストルとオレンジ色のポルックスが仲良く並ぶ光景は夜空でよく目立ち、2つの星には「銀星」「金星」という和名もあります。
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