水星探査機「ベピコロンボ」打ち上げ成功

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JAXAと欧州の水星探査機「ベピコロンボ」が打ち上げに成功し、探査機の分離が確認された。これから7年をかけて水星に向かう旅が始まる。

【2018年10月22日 JAXAESA

10月20日10時45分28秒(日本時間)、水星探査機「ベピコロンボ」を搭載したアリアン5ロケットがフランス領ギアナのギアナ宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは予定通りに飛行し、打ち上げから26分47秒後に探査機が正常に分離されたことが確認された。

「ベピコロンボ」の打ち上げ
ギアナ宇宙センターからアリアン5ロケットで打ち上げられる「ベピコロンボ」(提供:ESA-CNES-Arianespace)

「ベピコロンボ」はJAXAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)による国際水星探査計画で、両宇宙機関による初の大規模国際協力ミッションだ。JAXAが開発した水星磁気圏探査機「みお(MMO)」とESAが開発した水星表面探査機「MPO」の2機の探査機、さらに水星までの道のりをイオンエンジンで航行する推進モジュール(MTM)が合体した構造になっている。「みお」は高高度の水星周回軌道から水星の大気や磁場、磁気圏を探査する。「MPO」は水星表面の地形や化学組成を探査し、水星の内部構造や極域の氷についても調べることになっている。

地球でスイングバイする「ベピコロンボ」
地球でスイングバイする「ベピコロンボ」のイラスト。先頭の円錐形のサンシールドの中に「みお」があり、その後ろに「MPO」が接続されている。一番後ろには太陽電池パネルとイオンエンジンを搭載したMTMがある(提供:ESA/ATG medialab)

「ベピコロンボ (BepiColombo)」の名は、イタリアの天体力学者ジュゼッペ・コロンボ(1920-1984)のニックネームから採られている。コロンボは水星の自転周期と公転周期が 2:3 の共鳴関係にあることを発見し、また1974年に初めて水星に到達した米国の「マリナー10号」ミッションでは、金星でスイングバイを行うことで水星に到達する軌道を初めて提案した。

水星は太陽の強い重力場の下にあるため、探査機が水星に到達するには軌道変換に大きなエネルギーが必要となる。そのため、「ベピコロンボ」は今後7年をかけて太陽の周りを何周も公転しながら地球・金星・水星で計9回のスイングバイを行い、7年後の2025年12月に水星に到着する予定だ。

水星に到着した「ベピコロンボ」はまずMTMを分離し、「MPO」の化学エンジンで減速して水星周回軌道に入る。ここで「みお」とサンシールドを切り離し、さらに高度を下げて「MPO」が低軌道に入ることになっている。水星到着後、約1年間にわたる探査を予定しており、予算が認められればさらに1年の延長ミッションも計画されている。

打ち上げライブ中継の動画(提供:JAXA)

(文:中野太郎)