オリオン座に潜む赤ちゃん星たちのポートレート
【2020年2月28日 アルマ望遠鏡】
恒星は、宇宙に漂うガスと塵の雲の高密度な部分が重力で収縮することによって作られる。雲が収縮につれて回転の勢いが大きくなり、やがて中心に原始星が、その周りに回転するガスと塵の円盤(原始惑星系円盤)が形成される。原始星は円盤の物質を取り込んで成長し、最終的に円盤内に残された物質から惑星が作られる。
このようなシナリオを詳しく調べるには、原始星を多数観測することが必要となる。そのためには、星を取り囲むガスや塵の雲を見通すことができる電波観測が有効であり、高感度かつ高解像度で観測することによって、生まれたての暗い星や原始惑星系円盤、惑星形成の謎を解明する手がかりが得られる。
アメリカ国立電波天文台のJohn Tobinさん、米・トレド大学(現:米・SOFIAサイエンスセンター)のNicole Karnathさんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡とカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を使って、オリオン座分子雲にある多数の原始星を観測した。「VANDAM(VLA / ALMA Nascent Disk and Multiplicity; 発生初期の円盤と多重性)サーベイ」と名付けられたこの観測は、原始星と円盤の観測としては史上最大規模で、様々な進化段階にある原始星の様子が詳しく調べられるものとなる。
「この観測で、非常に若い原始惑星系円盤の平均的な質量と大きさが明らかになりました。これまでにアルマ望遠鏡でよく観測されてきた、より進化の進んだ円盤との比較が可能になったからです」(Tobinさん)。
研究チームによると、非常に若い円盤は進化の進んだ円盤と同じくらいの大きさを持つものの、質量はずっと大きいことがわかった。「星が成長するとき、周囲の円盤に含まれる物質を次から次へと吸い込んでいきます。つまり、若い円盤のほうがたくさんの物質を持っていて、これは惑星の材料になります。非常に若い原始星の周りでも、大きな惑星が作られつつあるかもしれません」(Tobinさん)。
観測された300個以上の原始星のうち4つは非常に不規則な形をしており、注目を集めている。「おそらく星形成のまさに一番始めの段階にあって、中心の原始星すらまだ十分にできあがっていないのかもしれません。正確な年齢はわかりませんが、おそらく1万歳よりも若いのではないかと考えています」(Karnathさん)。
また、「HOPS 404」という別の天体も注目されている。原始星から噴き出すガス流は秒速10km~100kmもの速度を持つのが普通だが、HOPS 404からのガス流はわずか秒速2kmであることが今回の観測でわかった。「HOPS 404はできたての太陽のような星で、ちょうどガスを噴き出し始めたところなのだと思います。これまでに観測された最も小さなガス流の一つで、生まれたばかりの原始星がどのような姿をしているのか、という理論予測と合致します」(Karnathさん)。
アルマ望遠鏡とVLAの高い感度と解像度は、原始星周辺と周囲の円盤の構造を明らかにするために欠かせない。アルマ望遠鏡は原始星を取り巻く高密度の塵の分布を明らかにし、より長い波長で観測するVLAの画像では原始星直近の構造を見ることができる。「アルマ望遠鏡とVLAの観測結果を総合して考えることで、惑星形成がどのように始まるのか、ようやくその理解が始まります」(Tobinさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:オリオン座に潜む赤ちゃん星たちのポートレート
- NRAO:How Newborn Stars Prepare for the Birth of Planets
- The Astrophysical Journal:論文
〈関連リンク〉
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