惑星の外側で塵が集まる様子をアルマ望遠鏡で観測

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若い恒星の周りで、できたての惑星のすぐ外側に塵が集まっている様子がとらえられた。形成された惑星が次の惑星形成の後押しをしている可能性を示唆するもので、太陽系のような複数惑星系の形成過程を解明する手がかりとなりそうだ。

【2024年12月17日 アルマ望遠鏡

惑星は、若い星を取り囲む原始惑星系円盤の中で、塵が集まることによって形成されると考えられている。しかし、これまでに5000個以上の系外惑星が見つかっているものの、どのように塵が集まって惑星系が形成されるのかという詳細な過程は未だに解明されていない。

ケンタウルス座の方向約370光年の距離に位置する若い恒星「PDS 70」は、この星を取り巻く原始惑星系円盤で惑星形成が進行中であり、円盤の内側にすでに形成された惑星が2つ発見されている。さらに、衛星を作る周惑星円盤や中心星近くのかすかな内部円盤、惑星の軌道の外側に幅の広い塵のリング構造も見つかっている。これらの特徴から、PDS 70は原始惑星系円盤や惑星形成について調べるのに理想的なターゲットとなっている。

国立天文台/総合研究大学院大学の土井聖明さん(現在は独・マックスプランク天文学研究所)たちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、PDS 70の詳細な塵の分布などを観測した。以前にも波長0.87mmでの観測が行われていたが、土井さんたちはより透明度が高く、塵の分布を正確にとらえることが可能な波長3mmで高解像度の観測を行った。

その結果、惑星軌道の外側に広がるリングの北西方向に、以前の観測ではあまり見られなかった非対称な明るさのピークが検出された。特定の方向に塵の放射が集中しているということは、成長した塵が狭い領域に集まっていることを意味している。リングを構成する塵の質量は、全体で地球質量の28倍、ピーク周辺で9倍と見積もられていて、複数の岩石惑星や1個のガス惑星の核(コア)を形成するのにじゅうぶんな量だ。

PDS 70
PDS 70(擬似カラー合成画像)。アルマ望遠鏡のほかケック望遠鏡やVLTのデータも用いている。(左)波長0.87mmの観測画像、(右)波長3mmの観測画像。3mmの画像では北西(右上)に塵の放射が集中している(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), W. M. Keck Observatory, VLT (ESO), K. Doi (MPIA))

今回明らかになった、惑星の軌道の外側に見られる塵の集まりは、既に形成された惑星がその外側の狭い領域に塵を掃き集めていることを示唆するものである。集められた塵は合体し、新しい惑星が作られる。太陽系のような複数の惑星からなる惑星系は、こうしたプロセスを繰り返すことによって内側から順に形成されていったのかもしれない。今回の研究は、すでに形成された惑星が周囲の円盤に影響を及ぼして惑星系の形成に至る過程を観測的にとらえたものとなる。

「同じ天体を可視光線や赤外線、電波など複数の波長で観測することで、異なる要素の特徴づけができます。今回、アルマ望遠鏡の観測波長域でも、波長ごとに異なる放射分布を示しました。アルマ望遠鏡で複数波長の電波観測を行うことの重要性を示す結果です。それぞれの構成要素は互いに影響を及ぼし合うため、それらを比較することで、系全体の理解を深めることができます」(土井さん)。

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