天の川銀河中心に観測史上最速の恒星

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天の川銀河の中心ブラックホールを巡る新しい恒星が見つかった。公転周期はわずか4年、最接近時には秒速8000kmで移動している。

【2022年7月12日 ケルン大学

私たちの天の川銀河の中心部には、太陽の約400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール、いて座A*がある。その強い重力に束縛され、猛烈なスピードでいて座A*の周りを公転する100個以上の星が、「いて座A*星団」(「Sスター星団」または「S星団」などとも呼ばれる)を形成している。

なかでも有名なのがS2と呼ばれる星で、いて座A*への最接近時には約200億km(太陽から海王星までの4倍程度)を秒速約7000kmで移動している。S2は明るい恒星であるため、その光に遮られた星が他にもいて座A*の周りに潜んでいると考えられてきた。

独・ケルン大学のFlorian Peißkerさんたちの研究チームは、20年近くにわたって蓄積された観測データと改良を重ね続けた分析手法によって、いて座A*の周りを4年周期で公転する恒星S4716を新たに発見した。いて座A*へ最接近する時のS4716の速さは秒速約8000kmにも達していて、これは超大質量ブラックホールを周回する既知の星の中では最速記録だ。

いて座A*を周るS4716を含む7つのSスターの軌道
米・ケックII望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRC2」がとらえた銀河中心の画像に、いて座A*(黒十字)を回るS4716(黄緑)を含む7つのSスターの軌道を示したもの(提供:Peißker et al., 2022

S4716は、最接近時にはいて座A*に約150億kmまで接近している。「恒星が超大質量ブラックホールにこれだけ近くて、これだけ高速かつ安定した軌道を回っているとは、まったく予想外でした」(Peißkerさん)。「ブラックホールの近くでは、恒星が簡単に作られることはありませんので、S4716は内側へ移動してきたのでしょう。いて座A*星団に属する他の星との接近などによって、軌道が大幅に縮小したのかもしれません」(チェコ・マサリク大学 Michael Zajačekさん)。

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