天の川銀河中心を回る星を電波で初観測
【2021年9月17日 アルマ望遠鏡】
天の川銀河の中心に位置する電波源「いて座A*」の周りではいくつもの恒星が公転している。その恒星の運動の様子から、いて座A*が超大質量ブラックホールであることが確かめられている。
これらの星々は赤外線で観測されてきたが、波長がさらに長い電波ではとらえられたことがない。星が放つ光の強さは波長の2乗に反比例するため、電波の放射は弱くなる。また解像度も波長に比例して悪くなるため、電波望遠鏡による恒星の検出は難しいのだ。これまで電波で観測できた恒星は、太陽系近傍のものに限られていた。
一方、電波は赤外線よりも透過力が強いので、電波望遠鏡の感度が高ければ、銀河中心方向に存在する大量のガスや塵の奥に深く埋もれた星も観測できると期待される。
JAXA宇宙科学研究所の坪井昌人さんたちの研究チームは、2017年にアルマ望遠鏡を用いて周波数230GHz(波長1.3mm)のミリ波でいて座A*周辺を観測し、周囲の星を電波で検出することに初めて成功した。検出された星は約50個で、ほとんどが極めて明るい星であるウォルフ・ライエ星やO型星だった。さらに2019年にも観測を行い、これらの星の運動を測定することにも成功した。
アルマ望遠鏡の観測結果によれば、星々の動きはランダムではなく、いくつかのグループに分類できる。そしていて座A*近傍では、多くの星はいて座A*を中心に時計回りに公転しているようだ。これは長年にわたる赤外線観測で知られていたことだが、アルマ望遠鏡は2年間隔のわずか2回の観測でその様子を確認することができた。
いて座A*の正体は直接的には観測されていないが、周囲を公転する恒星の速度から計算すると太陽の400万倍の質量が集まっていることがわかり、サイズと合わせて考えるとこの天体が超大質量ブラックホールであると結論付けられている。今回のアルマ望遠鏡の観測からも、従来と同じ結論が得られた。
さらにアルマ望遠鏡の観測から、天の川銀河の中心から最も近い星団「IRS13E」における星の動きも測定された。赤外線による従来の観測同様、星団のほとんどの星が西向きに運動していることがわかったほか、星団中心に星ではなく明るい円盤状の天体が存在することも明らかになった。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:天の川銀河中心ブラックホールを回る星の動きをアルマ望遠鏡で見る
- 日本天文学会:2021年秋季年会講演予稿集
- PASJ:ALMA astrometry of the objects within 0.5 pc of Sagittarius A* 論文
〈関連リンク〉
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