丸い円盤銀河の出現時期は70億年前?

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京都大学、東京大学、国立天文台の研究者らがハッブル宇宙望遠鏡の撮像データを解析し、丸い円盤銀河の出現時期が宇宙年齢約60億年、現在から約70億年前の時代とみられることを明らかにした。

【2015年3月11日 京都大学

銀河はその構造と性質によって大きく2タイプに分類される。渦巻き模様が見られ現在でも星が誕生している渦巻銀河(円盤銀河)と、模様が見えず星をほぼ生み出していない楕円銀河だ。円盤銀河は名前の通り円盤状の形に見えて、円盤の軸方向から見ると丸く、縁の方向から見ると薄く見える。つまり縦と横の2方向のサイズはほぼ同じで、高さ方向のサイズがそれより薄い。これに対して楕円銀河は縦・横・高さの3方向のサイズがジャガイモのようにばらばら(3軸不等)なのが特徴だ。

こうした銀河が宇宙の歴史の中でいつどのようにして誕生し成長してきたのかという問題は、現代天文学の重要な研究課題の1つで、とくにガスから星への転換史という観点からの研究は盛んに行われてきたが、銀河の形態がどのように変化(進化)するかという問題は観測精度の限界もありこれまでよくわかっていなかった。

竹内智恵さん(元京都大学)と太田耕司さん(京都大学)、東京大学、国立天文台の研究チームは、宇宙年齢が30億年ごろ(赤方偏移2付近)の星形成銀河を多数選んで見かけの軸比(丸さ)を測定し、銀河の形態を調べた。昔の宇宙にある星形成銀河は現在の宇宙に存在する円盤銀河の祖先と考えられるので、もし3次元的な形が変わっていなければ、この時代の星形成銀河の「丸さ」の分布は現在の円盤銀河のものと大差ないはずだ。形態を調べるためには優れた角分解能が必須なため、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)で最近得られた近赤外域での観測データが用いられた。その結果、現在の宇宙における円盤銀河とは異なり、「丸い円盤」ではなく、3つの軸の長さの傾向はばらばらに近いことが示された。

研究チームはさらに、より赤方偏移の小さい(つまり、より現在に近い)時代の星形成銀河の形を系統的に調べた。約20億年ごとの時代にわけて、それぞれ上記と同じ手法を用いて銀河の形態を調べたところ、赤方偏移0.85あたりでは現在の宇宙で見られるようなほぼ丸い円盤になっていることが明らかになった。宇宙年齢で言えば60億年ごろ、今から約70億年前ということになる。

丸くなる円盤銀河の進化のイメージ図
丸くなる円盤銀河の進化のイメージ図(提供:T. M. Takeuchi et al. 京都大学研究成果より)

丸くなってきた理由については、銀河内での力学的相互作用によるもの、銀河中心に存在する超巨大ブラックホールの影響、銀河同士の相互作用が頻繁でなくなってきたため擾乱がなくなった、といった説が考えられている。なぜ昔は丸くなかったのかという疑問もあるが、銀河相互作用が激しかったために乱れた構造をしていたのかもしれない。また、そもそもどうやってバルジができて現在の宇宙に見られるような円盤銀河の構造に進化したのかという問題も大きな課題だ。

より多くのサンプルを用いてさらに詳細な構造の進化を追い、銀河周辺の環境との関係も考慮することで、形態進化の物理的な原因が明らかにできる可能性があると考えられる。このような銀河構造の進化については、建設の始まった30m望遠鏡(TMT)によって大きく研究が進展することと期待される。