大マゼラン雲の外縁部に微かな星の集団
【2016年10月6日 Phys.Org】
「SMASH(Survey of the Magellanic Stellar History)」はチリのセロ・トロロ・アメリカ天文台で行われている観測研究で、天の川銀河の伴銀河である大小マゼラン雲や2つの銀河間をつなぐマゼラニック・ブリッジ、マゼラニック・ストリームの一部を調べている。
仏・ストラスブール天文台のNicolas Martinさんたちの研究チームは2014年1月、観測した恒星がHR図上で赤色巨星分枝や主系列星といった特徴のどこに分布するかを調べていた際に、大マゼラン雲の周縁部に星の集まり「SMASH 1」を発見した。星の色や等級と空間的な分布から、ひとかたまりの集団であることが確かめられたのだ。
SMASH 1の大きさは半径約29光年で、明るさは太陽の200倍ほどと非常に微かだ。地球からの距離は約18万6000光年、大マゼラン雲からは4万2000光年離れている。また、SMASH 1は約130億歳と老齢で、重元素が少ないこともわかった。
SMASH 1は大マゼラン雲の伴天体かもしれないと考えられており、大マゼラン雲の潮汐作用を受けて破壊されつつある可能性もある。「SMASH 1は大マゼラン雲の影響を受ける範囲内にあるようですが、速度を測定して軌道を調べてみると大マゼラン雲との結びつきはないという結論に至る可能性もあります。追加観測あるのみです」(Martinさん)。
〈参照〉
- Phys.Org: Astronomers discover a potential new satellite of the Large Magellanic Cloud
- The Astrophysical Journal Letters: SMASH 1: a very faint globular cluster disrupting in the outer reaches of the LMC? 論文
〈関連リンク〉
- Cerro Tolollo Inter-American Observatory: http://www.ctio.noao.edu/noao/
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー: 大マゼラン雲
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